「ここで次のミッションの話ね。ミッション①をこなすにあたって、きっと『女の人との出会いがない』問題が出てくるよね」
「あ、はい、そうです! 出会いがないんです。だからずっと好きな人もできなかったし」
「ミッションその② 週1ペースで出会いの場に行くこと」
「週1ペース…?! 出会いの場…?!」
「うん。このペースは絶対に守ってね、マストで。大丈夫だよ、こんなの運も縁もいらないことだから。行動さえすれば達成できる。涼太くんがやる気を出して情報収集をして、フットワークを軽くすればいいだけ。涼太くん次第でしかないの。簡単だよ」
「出会いの場って、例えば……?」
「合コン、街コン、相席居酒屋、友達の紹介、同窓会、オフ会、いっぱいある」
「なるほど……!」
「そういう女の人と出会うシチュエーションを、まずは週1ペースで、必ず予定として組んでね。男だらけの職場なら、その活動に付き合ってくれそうな同僚とかいるんじゃない?」
「いると思います……頼めば合コンもセッティングしてくれるとは思います……でも……」
「うん、でも?」
「合コンとか苦手なんですよね……というか、そういう出会いの場が全般的に……。過去に何度か行ったことはあるんですけど、いつも何を話したらいいか分からないっていうか、僕は性格的にああいう場に向いてないのかなぁって……」
「大丈夫だよ。『こういう場が得意な男は嫌だ』っていう女の人って実は多いし。合コントークが上手いキャラは、いると便利だけど、それを自分の彼氏にしたいっていう女の人の方が少数派で、慣れてなさそうな人とか、うまく立ち振る舞えてないくらいの男の人の方が、彼氏候補としてみるなら好印象だったりもする」
「そうなんですか……?!」
「ただし!」
そういうとハナコは、また一拍置いて、ニヤリと笑った。すごく重要なことを言いますよという雰囲気が伝わってくる。
「鎖国しちゃうのはダメ。あくまで交流はしないといけない。だから出会いの場に行くときは、話を回すのが上手いヤツを一緒に連れて行くといいよ。出会いの場慣れしてて、初対面トークが得意な男友達と一緒に参戦するべし」
「それだと、そいつに全部持って行かれないですか?」
「さっきも言ったけど、そういう男がタイプの女の人ばっかりじゃないから大丈夫。涼太くんは、きっとそういう場で自分から話しかけたり、話題を作って話を振ったりするのが苦手なんだと思うけど、相手から話しかけてくれたり、誰かから話を振ってもらえたら、話せるんだと思うの。女の人と話すキッカケづくりが苦手なだけ。だからそこは他人の力を借りた方がスムーズだよ。MC役がうまい男友達を隣に付けよう」
「なるほど……!」
「グイグイいける男だけがモテるわけじゃないから大丈夫だよ。女の数だけ、好みの男のタイプってあるから」
「自分より喋れるヤツと行くと負けるだけだと思ってました。どうせ今日も霞んで終わるんだろうなって思って最近では行かなくなってたし……そっか……でもそう考えると自分次第では逆にあいつらを味方にすることもできたのか……」
「そうだよー、出会いの場に強いヤツとか初対面トークが得意な男友達は便利だから大事にした方がいいよ! キッカケづくりと話を盛り上げることはお任せして、涼太くんはただ、その輪の中に入れてもらうだけでいいんだよ。誰が作った輪だろうと、同じ輪の中に入って楽しくお喋りできた後には、そのメンバーは仲良くなれているものだから」
出会いの場において、男は皆ライバルなんだと思っていた。誰かが良いところを発揮した分だけ自分は不利になるもんだとばかり思っていた。
これまで出会いの場に苦手意識があったのは、この思い込みのせいだったのかもしれない。なんだか早く出会いの場に行きたくなってきた。
「ミッションその③ 女の連絡先を10個ゲットすること」
「10個…?!」
「うん。10個だからそうだなー、週1ペースで出会いの場に行くとすると、最短で2週目には達成できるかもね。街コンとか相席居酒屋だと1回の収穫量が多いだろうし」
「そ、そうなんですかね……!」
「うん。女性との会話が得意な男をちゃんと味方に付けて臨めば、大丈夫だよ。誰にも頼らず鎖国するから惨敗するの」
「たしかに、思い返すと、過去の僕は出会いの場で貝になってた……」
「ウケるね(笑)。 涼太くんは、話しかけるのが苦手なだけで、話しをすること自体は苦手じゃないから大丈夫だよ。だって今さ」
そう言うとハナコはまた一拍置いてきた。なんとも意味ありげだ。涼太はハナコの期待に応えるように、集中力を高めて次の言葉に耳を傾けた。