「(歳の割には)いいスタイルしてるな!」
7月13日にパリでフランス大統領夫妻と会ったトランプ大統領が、また失言して英語圏のネットで炎上した。
録画されたビデオを観ると、トランプは、初対面のブリジェット・マクロン大統領夫人の身体を感嘆したように眺めて両手で示し、「You’re in such good shape」と言い、今度はエマニュエル・マクロン大統領のほうを振り向いて、「She’s in such good physical shape. Beautiful」と言った。
これは、とんでもないマナー違反だ。全世界から批判の声が上がり、イギリスのスポーツブランド「リーボック」は、さっそく「”You’re in such good shape… Beautiful”と言うのが適切な場合」というチャートを作ってツイートした。
ハフィントンポストをはじめ、「You are in such good shape」を「あなたはとてもスタイルがいい」と訳しているケースが多いが、それではニュアンスが正しく伝わらない。そこで、トランプの「褒め言葉」のどこがとんでもなく間違っているのかを説明しよう。
まず、アメリカやイギリスなど英語圏では、男性が女性の容姿についてコメントを述べるのは非常に失礼なマナーである。夫婦など親密な間柄でも「最近太ったんじゃない?」といったコメントをするのはご法度だし、学校や職場ではセクシャルハラスメントとみなされる。職を失う可能性もある。
次に、辞書によるin good shapeの定義は、人か物が良い健康状態にあるか良いコンディションにあることだ。
さらに重要なのは、この表現は「新品」に対しては使わないことだ。
中古車だけれども特に故障がないとか、骨董品に目立った破損がないとか、古いけれども「保存状態」が良いことを示す。そして、人の場合には、「年齢のわりに、健康でいいスタイルを保っている」というニュアンスになる。
フランス大統領夫人のブリジットが夫のエマニュエルより24歳年上で現在64歳だということは有名だ。
トランプが、ブリジット夫人と初対面で、「年寄りだと聞いていたのに、想像していたよりスタイルがよくて、びっくりした!きれいじゃないか」という露骨なリアクションをしたのだから、ビデオを観た人たちが唖然としたのは当然なのだ。
その直後に、トランプは夫である大統領に向かって、「彼女はすごくいいスタイルを保っているね。美しい」と繰り返したのも大いにまずい。妻を夫の所有物だとみなし、良好な保存状態にしている所有者を褒めていることになるのだから。
英語や英語圏のマナーに馴染みがない異文化の人が悪気なく犯したミスならともかく、国民のお手本であるべきアメリカ大統領がやってしまったのだから罪は深い。