第2回】なぜ、日本は失点してしまったのか!? W杯予選日本×ヨルダン②

「ボールだけを見ていても、サッカーの本当の面白さはわからない!」日本代表戦や欧州サッカーなどを題材に居酒屋のサッカー談義を盛り上げる「サッカー観戦術」を解説します。2回目のテーマはヨルダン戦の2失点目についてです。ポイントとなるのは、サッカーにおける守備の観方。清水さんが指摘する、日本代表の7つの『関所』とは? 記事の内容や、サッカーの観方についての質問はこちらまで。

「簡単に抜かれすぎ!!」

2013年3月26日、日本代表はアウェーでヨルダンに敗れ(1-2)、ワールドカップ出場権の獲得が持ち越しとなった。

前回は1失点目、コーナーキックからの失点を取り上げたが、僕はその要因として、マークがズレたことのほかに、城壁が低かったこと、そもそも日本代表がセットプレーに耐える11人のピースを組み合わせたパズルになっていないことを理由に挙げた。

人の考え方はさまざまだ。この件について、スペインでのサッカー指導経験をもち、姫路獨協大学でサッカーの指導者を務める藤原孝雄さんは「そもそも僕ならFWにマーク担当をさせない」と言っていた。

どういうことか?

つまり、ザックジャパンではFWの前田遼一が、今野泰幸、吉田麻也、長谷部誠らと共に、コーナーキックの守備時にマンツーマンで相手のマークを担当している。それが「ありえない」というのだ。

なぜなら、そもそもFWは攻撃の選手なのだから、マンツーマンで相手を抑えることに慣れていない。試合の流れの中で全くやらない守備なのに、セットプレーのときだけマンツーマンでマークをやれといってもうまくいかない、というのが藤原さんの理論。

ヨルダン戦の失点に前田は直接絡んでいないが、たしかに納得できる考え方だ。

思い返せばザック監督は2011年アジアカップのとき、前田遼一をコーナーキックのマーク担当に任命し、それ以降もずっと同じ役割を続けさせている。しかし、当時もあまりマークの経験がなかった前田は、ザック直々の指導を受け、体の向きから間合いの取り方に至るまで、ザック流のマンツーマンをマンツーマンでみっちりと教わった。

……ということは、ザックは新しくFWを招集するたびにコーナーキックのマンツーマン指導をやるつもりなのだろうか。慣れない守備がうまくいかない可能性だけでなく、FWのタスクが増え、ストライカーがいろいろな約束事を考えながら試合に入ることになる。


僕だったら「あれをやれ」「これをやれ」と本来の持ち味とは関係ないところで口うるさく細かいことを言われてたら、良い文章なんか書ける気がしないが……どうなのだろう。ちょっと注目していきたいポイントだ。

さて。これより本題。
今回はヨルダン戦の2失点目、カウンターからドリブル突破されて追加点を許した場面について『サッカーの感想戦』を行いたい。
※『感想戦』とは、将棋などで対局が終わった後に着手の良し悪しや最善の一手についてお互いの意見を交わすこと

まず、あの場面を思い返してみよう。

ヨルダンのクリアボールを左サイドで酒井高徳が清武弘嗣へ頭でつなぎ、酒井高がリターンパスを受ける。ここで酒井高は寄せてきた7番(ディーブ)をかわそうとしてボールを奪われ、再び奪い返そうと競り合いがもつれたところで7番が地面に横たわりながら縦のスペースへパス。

酒井高も下がりながら追いかけるが、中央から流れてきた10番(ハイル)のほうが先にボールに出会う。ここで吉田麻也と酒井高が一瞬、お見合いのようになり、あわてて寄せた吉田がズバッと縦に抜かれてハイルがドリブルで独走。そのまま日本ゴールに襲いかかり、GK川島永嗣の脇を抜いてゴールを決めた。

「簡単に抜かれすぎ!!」

ごもっともだ。この失点について吉田の責任が追及されるのは仕方がない。ファールで止めておけばよかったし、最悪イエローカードをもらったとしても失点は免れるので結果オーライだ。吉田はその判断に迷ったようだが、それこそがヨルダンに対する油断であり、センターバックとしては致命的なミスだった。

ハードタックルで有名なプレミアリーグ、サウサンプトンに所属するDFとしてはあまりにもお粗末な対人守備と言わざるを得ない。これが日本代表ではなくプレミアリーグで起こったミスなら、相当に厳しい批判にさらされるだろう。「チームに1人、中学生が交じっていた」。現地メディアならそんな見出しを付けるかもしれない。


また、あの場面で吉田の中に「どんなことをしてでも止める!」という充分な危機意識が芽生えなかったとしたら、それは吉田だけの責任ではない。彼にそれだけの危機意識を感じさせなかったこと、すなわち日本代表を応援する我々の姿勢が“ぬるい”ことにも一因がある。

そして、もう一つ言いたい。これは吉田だけが背負うべき十字架なのか?

そもそも失点とは、戦における落城のようなものだ。最終的に城門突破を許し、GK川島が守る天守閣にまで攻め込まれたのは吉田の責任だが、そこに至るまでに多くの『関所』がヨルダンを止められず、たやすく突破を許したのも事実だ。

僕が観る、あの場面で機能するべきだった『関所』は7つある。誰か1人でも止めてくれれば事なきを得たシーンだが、吉田を含め、日本は7つの関所のほとんどが眠っていた。

一つずつ振り返っていこう。

※この連載では、記事の内容や、サッカーの観方についての質問を募集しています。
kaizokuo@livedoor.com までメールをお送りください。頂いたメール内容は本文中で紹介することもあります。ぜひ、『感想戦』に参加してください!

あっさりと破られた7つの関所

一つめの関所は、香川真司だ。

岡崎慎司のクロスを胸トラップした香川は、シュートを打たずにボールを浮かせて突破を図り、そのボールをクリアされたところからヨルダンのカウンターが始まった。

「シュートを打たなきゃ!」と叫ぶ松木安太郎氏の8割以上のシーンには首を傾げたが、この場面だけは完全に同意だった。日本は多くの選手がゴール前になだれ込み、カウンターを食らいやすい状況になっていた。

突破に使うスペースがなかったこと、シュートを打てば混戦の中から何かが起こる可能性が高まっていたこと、カウンターを未然に防ぐこと。この3つを考えると、前がかりになっていた日本の攻撃をシュートで終わらせる状況判断が必要だった。

イタリアのサッカー中継番組では、このようなカウンターを食らって失点した場面があると、必ず「今の失点は○○がシュートを打たなかったせいだ!」と糾弾する。

イタリア人はこのようなやられ方を嫌うが、果たしてザックはどうだろうか。


二つめの関所は、酒井高徳だ。

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居酒屋サッカー論 ~誰でもわかる深いサッカーの観方~

清水英斗

「ボールだけを見ていても、サッカーの本当の面白さはわからない!」日本代表戦や欧州サッカーなどを題材に居酒屋のサッカー談義を盛り上げる「サッカー観戦術」を解説します。「サッカー観戦力が高まる」の著者、清水英斗さんによる、テレビ中継の解説...もっと読む

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コメント

Fumiaki_Ishii TV解説ではなかなか無い(できない?)組織的な視点での考察が面白い ★ 5年弱前 replyretweetfavorite

die_kuma 清水さんの解説はちょうわかりやすいなあ。  5年弱前 replyretweetfavorite

hirarisa_LV0 「そもそも失点とは、戦における落城のようなものだ。最終的に城門突破を許し、GK川島が守る天守閣にまで攻め込まれたのは吉田の責任だが、そこに至るまでに多くの『関所』がヨルダンを止められず、たやすく突破を許したのも事実だ。」https://t.co/9Aoh6fqNen 5年弱前 replyretweetfavorite

kaizokuhide 【04/05 13:24まで無料 】 5年弱前 replyretweetfavorite