すべての細胞は細胞から
人間の身体は、約37兆個の細胞からなっています。大きさは場所によってちがいますが、直径は10~100㎛(マイクロメートル。㎛は㎜の千分の一)程度です。
細胞の基本は、細胞膜、細胞質、核で、ほかにミトコンドリアや、リボソーム、ゴルジ体などの細胞小器官があります。
さて、細胞はそもそもどこから生まれたのでしょう。ドイツの病理学者、ルドルフ・フィルヒョウ(1821~1902)は、次のような名言を残しています。
「すべての細胞は細胞から生じる」
しかし、これでは答えになっていませんね。最初の細胞がどこから生まれたのか、明らかにしていないのですから。
この名言の真意は、病気は生命の全体に起こるのではなく、細胞のグループに起こるということです。これが「細胞病理学」で、それまでの「体液病理学」にとって代わる画期的な学説でした。
この説の鋭いところは、がんなどの悪性腫瘍も、細胞からなるかぎり、患者自身の正常細胞から発生することを看破した点です。
もちろん今では、すべての病気が細胞の病変によるとはかぎらないことがわかっています。 たとえば、精神疾患や機能不全症などは、細胞をいくら観察しても異常は見つかりません。 しかし、フィルヒョウの名言により、治療のターゲットが細胞になったことで、医療は大きく進歩しました。
この名言には、もうひとつ重要な意味合いがあります。それは、「生命自然発生説」の否定です。