藤田貴大
台風と軽石。
ーもの凄い圧力を仕掛けてくる邪悪なうねりにも負けずー
【第13回】上空から仕掛けてくるもの凄い圧にやられ、悲鳴をあげるからだを抱えてフラフラと歩いていった先で、ついに運命の出会い? 見ず知らずの彼女に声をかけるのは罪なのか? カラカラと空回りする妄想の中で演劇作家の夏の日はこうして暮れていく・・・。
低気圧に弱いひととしか、低気圧の話をしたくない。それはトマトが好きなひとに、なんでトマト食べれないの? と言われるのと似ていて、いや食べれねーんだから食べれねーんだよ、ってだけなんだけど、トマトが好きなひとには嫌いな意味が本当に絶対にわからないのだろう。なのに、いちいちたぶん一生、「いやあ、なぜだか、昔から・・・」と説明しなくちゃいけない。低気圧による偏頭痛に悩まされたことのないひとにとって、低気圧は低気圧ってだけなんだろう。ぼくにとっては上空からもの凄い圧力を仕掛けてくる邪悪なうねりだという認識があるから、それくらいのレベルで低気圧と付き合っているひととしか、低気圧の日は喋(しゃべ)りたくない。
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この連載について
藤田貴大
演劇界のみならず、さまざまなカルチャーシーンで注目を集める演劇作家・藤田貴大が、“おんなのこ”を追いかけて、悶々とする20代までの日常をお蔵出し!「これ、(書いて)大丈夫なんですか?」という女子がいる一方で、「透きとおった変態性と切な...もっと読む
著者プロフィール
1985年生まれ、北海道出身。桜美林大学文学部総合文化学科にて演劇を専攻、2007年に『スープも枯れた』でマームとジプシーを旗揚げ。2011年に発表した三連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2013年『てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。』で初の海外公演。さまざまな分野のアーティストとの共作を意欲的に行うと同時に、中高生たちとのプロジェクトも積極的に行っている。主な演劇作品は『あ、ストレンジャー』『cocoon』『書を捨てよ町へ出よう』『小指の思い出』『ロミオとジュリエット』『sheep sleep sharp』など。著書に『おんなのこはもりのなか』『Kと真夜中のほとりで』がある。