靴に洋服、エステ、スポーツジム、美容院──年を取っても人に見られることを意識しているゲイは、流行に敏感で、こうした商品・サービスの消費意欲が旺盛だ。
彼らに人気のファッションスポットといえば、伊勢丹メンズ館(東京・新宿)や阪急メンズ館(大阪・梅田、東京・有楽町)。「カジュアルからラグジュアリーブランドまで一通り見ることができるし、化粧品や下着は他にはない豊富な品揃え」と熱い支持を受ける。
当の伊勢丹は、LGBTの顧客を意識しているかという本誌の問いに全面否定したが、「ゲイタウン・新宿2丁目とは共存共栄」と複数のアパレル関係者は口を揃える。
大手百貨店に展開する男性下着ブランド「TOOT」はゲイの顧客も数多く抱える。看板商品の「ナノボクサー」は男性らしいスポーティさとセクシーさがウリだ。
フロント部分に〝寄せて上げる〞機能を持たせ、立体的なデザインを施すTOOTのパンツ。見た目だけでなく、洗濯してもフィット感が損なわれないなど上質さにこだわり、ファンは多い
代表の大石卓氏は2000年、百貨店が売り上げ減に苦しむ中、男女共に化粧品と下着だけは堅調だったことに目を付け、当時はほとんどなかったオシャレな男性用下着の開発をスタート。見た目だけでなく、着心地や国産の品質にこだわることで、男性用下着としては3500円前後と高額ながら、一躍人気ブランドとなった。
一方、ゲイの間の流行が思わぬ広がりを見せることもある。オネエタレントが薦めた韓国コスメやつけまつげは、女性たちに一大ブームを巻き起こした。
LGBTマーケティングと一口に言っても正解はない。狙い過ぎても当たらない、そこに難しさがあるようだ。