僕たち夫婦の住む町には、やたらと小さな子供連れのお母さんがうろうろしている。もちろん、お父さんも同じ数だけいるのだろうけど、僕が町を出歩くのは昼間が多いし、お父さんは働きに出ているので存在が見えないわけだが、それにしても、昼飯を食いに行くと、たいがいの店でやたらとママ友たちが赤ん坊を連れてワイワイと食事をしていて、うるさくて気が萎える。なんてことを書くと、あまり人に好かれないが、正直な気持ちだ。
僕の中には他人の赤ん坊に対して「微笑ましく思う」という回路がまる一つないのだ。思いたいという気持ちは本当にあるのだが、ないものはどこをひねってもない。子供をスマホやパソコンの待ち受けにしている人を見るたび、別に嫌な気持ちにはならないが「ああ、あっち側の人ね」と思ってしまう。ちなみに僕のスマホの待ち受けは与沢翼の顔写真を半分にトリミングしたものだ。「秒速で億稼いで、秒速で破産した男」の、「億稼ぐ」方にだけあやかっているのだ。まあ、どうでもいい話だ。
子供が多いので、当然子供服屋もやたらとある。妻のM子は「子供服はもうかるんですよ」と言う。どんどん成長するから買い替えが多いと。なるほど、しかし、こう、子供用品店が街にあふれていると、少子化問題なんて嘘のようだ。僕が、子供を作る気がない分、みなさんには頑張ってほしい。
妻には早い段階でその話は納得してもらった。妻は「夫が欲しがらない子供は産んでもかわいそうなので産まない」と言ってくれた。妻の前に付き合っていた人とは、「私は絶対欲しい!」と言うので、別れることになった。僕には生まれた子供との未来に対していいビジョンがまったく持てないのだ。グレたらどうしよう。殺人鬼になったらどうしよう。病気や自殺で死んだらどうしよう。大人になって多額の借金を申し込まれて老後のたくわえが危うくなったらどうしよう(僕の兄がそういう子供だった)。また原発が爆発したらどうしよう。ネガティヴなことばかり考えて、どんどん気持ちが沈む。
この間、久しぶりに裸足の子供を見た。
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