なんという美しさ! どうしてお店で売らないの?

市場に出回らないのが不思議なくらいに美味しいつぼみ、あまりの美しさに心底おどろいた野菜の花々。金田さんが野菜を育てるようになって初めて知ったこと、気づいたことを改めて振り返ります。

育てた人だけが味わえる

春めいてきたころ、畑で思いがけないものができた。

コマツナなのだが、コマツナと呼んでいいものやら。コマツナのつぼみである。

とり逃したコマツナから何やら元気な茎が伸びてきたと思ったら、その先につぼみがついたのだ。

植物だから当然だろう。

しかし、お店で売られるコマツナしか知らなかった私は、この菜っ葉に花が咲くなんて、つぼみを見るまで考えもしなかった。

「つぼみは、とってもおいしいよ」お隣のO野さんが言う。

「食べるんですか、これ?」

「菜の花と同じ。先を摘んで、おひたしとかで食べてごらん」


コマツナのつぼみです。関東ではおなじみですが、関西ではコマツナが売られていない地域もあるそうで、
ローカルな話ですみません。

摘んでみると、とても柔らかで、はさみを使わなくてもポキポキと折れる。

その晩さっそく、さっと茹でて、からし醤油で食べてみた。

「んー!」

あまりのおいしさに声が出てしまった。

菜の花のようなほろ苦さはなく、甘くて香り高い。

自分で育てていなかったら、この味を知らないまま死んでいたのか。

「おいしいねぇ。驚いた」夫も箸が止まらない。

「コマツナよりずっとおいしいね」

いや、これもコマツナだから、正しくはコマツナの葉よりもおいしいと言うべきだが、なぜこれが市場に出回らないのか不思議でたまらない。

コマツナはつぼみがうまいと世間に知れると、JAにとってまずいことでもあるのだろうか。


いまでは、つぼみを食べるためにわざと春までコマツナを残しています。

コマツナだけじゃない。

ハクサイ、タアサイ、ミズナ、カブ、チンゲンサイなど、植えっぱなしで春を迎えたアブラナ科の野菜は、みなつぼみをつける。

どれもおいしくて、おまけに貴重だ。味わえるのは春先のほんの短い時期だけだから。


みんな菜の花

農園のあちこちが、黄色に色づき始めた。取り残したアブラナ科の野菜が開花したのだ。

春風にのって甘い香りが漂い、花粉や蜜を求めて、ミツバチが飛び交っている。

アブラナ科の野菜は、ダイコンやルッコラなど白花もあるけれど、ほとんどに黄色い花が咲く。

「菜の花」とは、アブラナ科の黄色い花をひっくるめてそう呼ぶのだと、初めて知った。

たとえば、


コマツナの花


冬は鍋に入れる、ミズナの花


茎が紅色の中国野菜、コウサイタイの花。
菜の花には、ミツバチがたくさんやってきます。


ブロッコリーの花。ふだん食べているのはつぼみですから、
それがいっせいに咲くと、ブロッコリーひと株で花畑になってしまいます。

これらはどれも菜の花だ。

春の情景を歌った唱歌「朧月夜」には、「♪菜の花畠に 入日薄れ」と菜の花畑が描かれる。

あの「菜の花」にも正式な植物名があるはずで、気になって調べてみたら、驚いた。

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
シロウト夫婦のズボラ菜園記

金田 妙

毎日、採れたての新鮮な野菜が食卓にのぼる。そんな生活に憧れる人は多いのではないでしょうか。自分で野菜を作れればよいけれど、畑はないし、仕事は忙しいし、週末は遊びたいし…。それでも、思いきって家庭菜園の世界に飛びこんでみたら、おもしろい...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

muku_dori_ 「そして私は、その命を奪って生きている」 〆への走り方が最終回かと思うような、ちょっといままでにない感じ 3年以上前 replyretweetfavorite

koichinsa 菜っぱは何でも咲けば菜の花よ!と教えてくれた先輩の言葉をおもいだした。 https://t.co/oYp50RIjOf 3年以上前 replyretweetfavorite

suerene1 https://t.co/pqEkkz7vo0 3年以上前 replyretweetfavorite

alpaca_moco ヤングコーンのヒゲは甘くておいしかったな~。小松菜のつぼみも食べてみたい! 3年以上前 replyretweetfavorite