実は医学はおもしろい! ウソがいっぱいの医学の不思議

ようこそ、ミステリアスな医療の世界へ――。本講座では、モーツァルト、レクター博士、手塚治虫、ドストエフスキー、芥川龍之介、ゴッホ、デビットボウイなど、文学や映画、芸術を切り口に人体の不思議を紐解いてゆきます。脳ミソを喰われても痛くないってホント?  モーツァルトの耳はヘン?  「医療商人」にダマされない方法とは?  医療小説の名手・久坂部羊さんによる、世にも楽しい医学講座の開講です!

アルコールを飲むとトイレに行きたくなるわけ

 医学には興味深いことがたくさんあります。

 たとえば、昔話に出てくる「一つ目小僧」と「三つ目小僧」は、医学的な意味合いがまるでちがいます。前者は実際に存在しますが、後者はあり得ないということです。

 これは、赤ん坊の目が、どのようにしてできるかを考えればわかります。もともと胎児の 目は、最初、顔の真ん中に目のもとになる組織が一つできて、それが徐々に左右に分かれて 両目になるのです。だからこの過程にトラブルが起こると、目が一つの赤ちゃんが生まれます。いわゆる「単眼症」です。英語では、「サイクロピア(cyclopia)」。ギリシャ神話に出てくる一つ目の巨人、「キュクロプス」に由来しています。

 のっけから少々ディープな話になりましたが、いわゆる架空の生物には、こうした実在のモデルがあるものが少なくありません。ハプスブルク家の紋章に描かれた双頭の鷲なども、いわゆる鷲のシャム双生児(「結合双生児」)で、一つの身体に二つ頭のある鷲がきっと実在したのでしょう。

 ほかに、私がおもしろいと思うのは、アルコールを飲んだときにトイレに行きたくなる理由です。「はじめに」にも書いたように、アルコールには利尿作用はありません。あるのは「抗利尿ホルモン」の分泌を抑える働きです。抗利尿ホルモンというのは、文字通り利尿に抵抗する、すなわち、尿をあまり出さないようにするホルモンです。尿が出ないと困るのに、なぜそんなホルモンがあるのでしょう。それは脱水になるのを防ぐためです。腎臓は血液中の老廃物を捨てるため、つい尿を作りすぎてしまいます。それにブレーキをかけるために、脳の「下垂体」というところから、抗利尿ホルモンが出るのです。アルコールはその分泌を抑えるため、ブレーキにブレーキがかかって、結果、オシッコが増えるというわけです。

 では、なぜアルコールを飲むと、抗利尿ホルモンが抑えられるのでしょう。それはやはり、アルコールが身体によくないからだと思います。早く体外に排出するために、身体はどんどん尿を出させるのです。

 そんなことを考えながら、ビールを飲んでトイレに行くと、ああ、身体はしっかり働いてくれているなと感じます。

ゴックンの仕組み

 食べ物と空気は、同じところからのどに入るのに、なぜ前者は食道、後者は気管へとうまく振り分けられるのでしょうか。

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カラダはすごい! モーツァルトとレクター博士の医学講座

久坂部 羊

ようこそ、ミステリアスな医療の世界へ――。本講座では、モーツァルト、レクター博士、手塚治虫、ドストエフスキー、芥川龍之介、ゴッホ、デビットボウイなど、文学や映画、芸術を切り口に人体の不思議を紐解いてゆきます。脳ミソを喰われても痛くない...もっと読む

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コメント

aokazuya https://t.co/CisUWA5C2p 約1年前 replyretweetfavorite

bus_gasbusgas 『「点滴」がなぜ効くのかということは、医学的にきちんと説明がつきません。』!!! 1年以上前 replyretweetfavorite

hiroc0831 #スマートニュース 1年以上前 replyretweetfavorite

mame623 点滴の話面白かった。> 1年以上前 replyretweetfavorite