日中の電話にドキッとする
丸山 前回に引き続き、『クレイジージャーニー』の演出を担当されているTBSの横井雄一郎さんに、番組の裏話をうかがっていきます。
『クレイジージャーニー』のロケは、基本的にディレクターさんと僕の2人で行って、 横井さんは日本で待っていますよね。とくに僕は危ない地域に行くことがほとんどですけど、安全面で気をつけている点はありますか?
横井 渡航先に関しては、外務省の渡航情報で赤くなっているところ(※)はダメ。後は、ジャーニー(出演者)の方と相談して、「こうなったら引く」という線を決めています。
現地に着いたら、ディレクターから毎日連絡を入れてもらいます。現地時間の日中に連絡がないと安心なんですよ。「うまくいっています」という報告が夜になれば入りますから。でも、日中に電話がかかってくると、何かあったのかとドキッとしてしまう。まあ、取材先での判断は一番慣れているゴンザレスさんに委ねてますけども。
※危険度レベル4で、退避勧告が出ている地域。
丸山 とはいえ私が取材中止の判断を下したのは、バングラデシュ編だけですね。
横井 そうですね。実は、バングラデシュはちょうどその1年前にもロケ先候補として挙がっていたんです。でも、日本人が殺されるという事件(※)が起きて、IS が犯行声明を出した。それで延期したという事情があったのに、またテロ事件が起きたと聞いて、すごく焦りましたよ。ゴンザレスさんたちが国外に脱出できる ルートがあるのか日本でも必死に調べました。
※2015年10 月、農業を 営む日本人男性が銃撃され死亡した事件。
丸山 チッタゴンを離れて、(テロの起きた)ダッカに僕だけでもしばらくいようと思ったんですけど、別行動をするのはディレクターさんにとって危険すぎる。結局、一緒に帰国しました。
こうして各地でディレクターさんが撮ってきた大事な映像が、どう編集されていくんでしょうか。
横井 まずディレクターがつないできた映像を僕が見て、ナレーションを考えていきます。でも、編集前の素材も全部見ちゃうんですよ。ディレクターはカットしている箇所でも、「この道の奥ってどうなってるんだろう」と見はじめると止まらなくなっちゃって。街中の様子をもっと見たいから、使う映像を長くすることもあります。
丸山 横井さんの、旅人としての目線を感じます。キベラスラムのヤギのシーン(※)を使ったのも横井さんですか?
※キベラスラムを歩いていた丸山が、ヤギの群れを発見。「ただ集まっているだけですね」というコメントが謎の情感を残した。
横井 そうそう。「あれ、ヤギがいる」と気づいたんですよ。ディレクターがカットするのも当然なんですが、興味が止まらなくなっちゃって復活させたら、松本(人志)さんにもウケて、クリーンヒットしま したね。
丸山 スラム街の日常に焦点を当てたわけですね。
横井 スラム街の生活だったり、メキシコ麻薬戦争の現実だったり、現地で起きていることを淡々と紹介するべきだと思ってやっています。「かわいそう」とか「ひどい」とか、こっちの価値観で判断するのは違いますよね。そこに住んでいる人の生活を尊重して、貧困生活のなかで、電気をどうやって引いているのかといった日常をありのままに伝えるようにしています。
最終回はどうなる!?
丸山 横井さんもロケに行きたいんじゃないですか?
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