やらない理由

浮気はしたいが、浮気をされるのは嫌

第16回は「浮気」ジレンマ。愛する人にやられては絶対に嫌なことなのに、自分のことを完全に棚に上げて、願望が芽生えてしまう……その代表が浮気ではないでしょうか。胸をはって浮気経験者といえる方も、願望をギリギリのところでおさえてらっしゃる方も、カレー沢薫氏の当コラムを参考にいまいちど浮気と向き合ってみてください。きっと新境地が開けるはずです!

一大ブームに乗る必要性

今回のテーマは「浮気はしたいが、浮気をされるのは嫌」である。

今まであまたの「クソかよ」としか言いようのない寝言に挑んできたが、今回は擁護すればするほど私の株まで下がりまくるという罠(わな)みてえなテーマである。

浮気をすることに関してはさすがに肯定できない。友人が「浮気してしまうかも」と言ってきたら「よせよ」と言うだろうし、どうでもいい奴が言ってきたら「好きになっちゃったならしょうがないよね!ガンバ!ガンバ」と両拳を激しく上下させながら言うだろう。

だが、しょせん、言い訳と屁(へ)理屈、自己弁護しかない当コラムだ。「自分がされて嫌なことはするべきではない」とか「相手を愛しているなら浮気などできないはずだ」みたいな、人肌に温められたコーラみたいなことを言っても仕方がない。

この際相手のことはどうでもいい、100兆%自分のことだけ考え、自分を愛で、prprしよう、そして己の唾液まみれの顔を夕日に照らされながらこう思うのだ。「200兆%自分のために浮気はすべきではない」と。

浮気といっても色々あるだろう、本当に遊びから、本気、結婚した後に運命の人と出会ってしまったということもあるかもしれない。しかし、他人から見ればどれも同じなのだ。おばあちゃんから見た、ジャンプ、マガジン、サンデーぐらい全部同じ「浮気」なのだ。

そして昨今の空前の不倫ブームを見てわかるように、我が国にとって、他人の浮気、特に不倫は、どんな重大ニュースを差し置いてでも報道すべき事件なのである。何故なら、みんなミサイル発射より他人の不倫に関心があるからだ。そして当然だが不倫した方が叩かれる、しかしその叩(たた)かれ方は56人ぐらい殺したのかと言うぐらい苛烈だし、もちろんその不倫が、浮気だろうが本気だろうが運命だろうが叩く側には関係ない。

相手のためではなく、自分のための決断

仮に、配偶者やパートナーとの仲が冷え切っており、働かないは家のことはしないは、完全にモラがハラっているとしよう。片や浮気相手は、真面目で誠実であなたのことを助けてくれたとする、しかし周りも民法もそんなこと知ったこっちゃねえのだ。

つまり浮気をしてしまったせいで、モラハラ野郎は被害者になり、周りもそっちに同情的になるし、あなたは一気に加害者だし、善人であったはずの相手も、間男かドロボウおキャット様と呼ばれるのだ。

理不尽だ、弁護士を呼べ、と言っても、ヤッちゃってる分、法廷でも不利である。その内、相手にも問題があった、という話も出てくるだろうが、それが出てくるのはだいたい、加害者の火葬が終わった後だし、「どんな理由があっても浮気をした方が悪い」という結論になる場合が多い。

自分が可愛くてたまらない、このオレ様がそんな目に遭っていいはずがないだろう。しかし浮気をするとそういう目に遭う可能性があるのだ。
浮気というのは「弁護も擁護も不可能な不利な立場」に自分を立たせるということである。相手のためではない、自分が大切ならすべきではないのだ。

ただ、パートナーに特に問題はなく、ただ浮気がしたく、逆に相手がしたら、別れてもやらず一生なじり続けるし、むしろ自分に浮気をさせてしまうパートナーの方が悪い、という発想なら、あなたの方がモラハラ野郎の可能性が高く、あなたが浮気をすることで、パートナーに有利に別れられる材料を与え、周囲もそっちに同情的になるだろう。

むしろあなたがパートナーに対して行った「最初で最後の善行」になるかもしれないので、その場合は浮気を肯定しても良いかもしれない。

誰も傷つけずに満足する方法

また浮気にはあまりハッピーエンドがない。
最高でも、パートナーにバレず、浮気相手とも揉(も)めず、フェードアウトできた、ぐらいのものだろう。不倫の末、パートナーと別れ、いわゆる略奪婚をした場合も一応丸く収まっているのではないかと思うかもしれない。

しかし、不倫や浮気というのは、恋愛という靄(もや)に隠れがちだが単純に「約束破り」なのである。約束を破るというのは男女間だけではない、全ての面での欠点である。

よって不倫関係から結婚するというのは、「約束破り男―約束破り女」という完全な万馬券なのだ。あなたがブラッド・ピットで相手がアンジェリーナ・ジョリーなら新しいドラマがはじまるかもしれないが、そうじゃないなら同じことを繰り返す可能性が高い。もちろん、それで幸せになった例もあるだろう、しかし、結婚はしょせん賭けというなら、少しでも勝率の高い方を選ぶべきだ。

このように、浮気は、倫理観どうこうではなく自分がかわいいならすべきではない。
よって、浮気はお勧めも肯定もできないが「浮気心」に関しては肯定できるし、ある意味お勧めできる。

浮気心というのは、パートナー以外に「いいな」「ヤりたいな」と思ってしまうことだ。これはどうしようもないことだ、私も結婚しているが、毎日夫以外の男(FGOの土方さん)を欲しいと思っている。これすら許されなくなったらだいたいのオタクは斬首である。

それにあなたの脳内で起こったことは、誰にもわからないし実害もない。「この女とヤりたいと思った瞬間には抱き終わっていなければいけない」という、プロシュート兄貴のような人材でなければ、浮気心の時点では誰も傷つけていないのだ。

その浮気心ですら「こんなことを考えるなんて裏切りだ」と抑圧してしまう真面目な人もいるだろう。しかし、世の中には「コレをしたら怒られる」「他人に害を与える」という「想像力の欠如」から起こる事件が多々あるのだ。

よって浮気心が起こったら、変に抑圧するのではなく、最後まで想像してしまおう、そして想像していく内に、バレた時どうなるか、まで考えが至り「すべきではない」と思えるのだ。

それ以前、割と最後まで妄想すれば、満足できるものである。脳内なら浮気も不倫も全て無罪だ、そんな治外法権が与えられているのに、わざわざ裁かれる現実でヤるというのもバカな話である。

この連載について

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やらない理由

カレー沢薫

「エッチはしたいが、付き合うのは嫌」。多かれ少なかれ誰もが抱える他人には打ち明けづらい虫のいい話。OL兼漫画家・コラムニストのカレー沢薫さんが挫折と諦めを肯定、それが正しいことだと示す当コラムで、スカッと爽快なメンタルヘルスを目指しま...もっと読む

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コメント

sikafuji "脳内なら浮気も不倫も全て無罪だ" 心強い至言。 妄想で誰に抱かれようと誰を抱こうと何人はべらせようと自由だ。誰も傷つかない。脳内恋愛サイコー。 約18時間前 replyretweetfavorite

leonidas32 妄想の重要な役割。…… 約19時間前 replyretweetfavorite

kita_sayaka 「ドバイのビーチで婚外性交渉の罪に問われ日本人男女が逮捕」のニュースを聞いて思い起こすのは、カレー沢薫氏の“おばあちゃんから見た、ジャンプ、マガジン、サンデーぐらい全部同じ「浮気」なのだ”ってフレーズ。ドバイの警察から見てもそうだ… https://t.co/CF6AnkYxKe 3日前 replyretweetfavorite

lepre_studio_jj 「この女とヤりたいと思った瞬間には抱き終わっていなければいけない」という、プロシュート兄貴のような人材 兄貴 最高 私の中の全ギアッチョが融けた 3日前 replyretweetfavorite