第6回】業績を左右する77兆円市場 米国企業が意識する“視線”

米国内のLGBT市場は77兆円といわれる。5兆7000億円の日本とは比較ににならないほど大規模だ。米国企業はこの巨大なマーケットを取り込もうと、競い合っている。市場にそっぽを向かれては、企業の業績に大きく影響する。そのため、企業が人種や国籍、性別だけではなく、性的指向で差別しないという非差別条項を掲げ、その理解を深める教育プログラムを実施し、多様性を促進するのは、最低限の対策となっている。

 2011年のクリスマス商戦が始まるころ、米国の大手百貨店、メイシーズで起きた出来事が、LGBT界で話題になった。

 テキサス州サンアントニオの店舗で婦人服売り場担当の女性店員が、女性用試着室に入ろうとした客に、試着室の使用を断ったのだ。その客は10代のトランスジェンダーで、化粧をし、女性用の服を手に持っていた。

 女性店員は客に対して率直に「あなたは男性でしょう」と言い、男性用の試着室を使うように説得したという。

 メイシーズは、この対応が同社の「人種や性別、国籍、年齢、宗教、ジェンダーによって差別をしない」というポリシーに反するとして、女性店員を解雇処分とした。

 一方の女性店員は、自分の宗教的信条から「この世に、トランスジェンダーは存在しない」とコメント。連邦雇用機会平等委員会に苦情申し立てを行ったという。

 また、こんなこともあった。

 米プロバスケットボール(NBA)ニューヨークニックスのスター選手である、アマーレ・スタウダマイヤー選手が、ツイッターでLGBTに対して侮蔑的なコメントをつぶやき、話題になった。それを知ったNBAは、すぐにスタウダマイヤー選手に対して5万ドルの罰金を科し、今後もLGBTに対する不適切な発言があった場合は厳正に対処する方針を発表した。LGBTコミュニティは、一連のNBAの対応を評価。スタウダマイヤー選手の謝罪コメントも高い評価を受けたという。

 どちらのケースも、日本では考えられないような厳しい対応だ。しかし、米国社会ではLGBTを含めた平等の意識が高く、世間や企業のこうした厳しい対応は珍しくない。

全米LGBT消費は77兆円
無視できない巨大市場

 企業が敏感で迅速な反応を示すのは、何よりも米国内のLGBT市場は77兆円といわれていることが大きい。プロローグで日本は5兆7000億円と述べたが、比べものにならないくらい大規模だ。

 米国企業はこの巨大なマーケットを取り込もうと、競い合っている。市場にそっぽを向かれては、企業の業績に大きく影響する。一つの失敗で、ライバルにシェアを持っていかれることも十分に考えられる。

 そのため、企業が人種や国籍、性別だけではなく、性的指向で差別しないという非差別条項を掲げ、その理解を深める教育プログラムを実施し、多様性を促進するのは、最低限の対策となっている。

 米国の人権団体HRC(Human Rights Campaign)は企業のCEI(Corporate Equality Index:職場環境や制度の公平さについての指標)を作り、02年から公表している。HRCのディーナ・フィダス・ディレクターによれば「“フォーチュン500社”のうち90%近くが性的指向による差別がないということがCEIの調査でわかっている」という。

メイシーズ・サンフランシスコ店のディスプレイ。今年のHRCスコアは90点だったが、2010年から2年連続で100点を取ったLGBT フレンドリーな企業の常連だ

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国内市場5.7兆円 「LGBT(レズビアン/ゲイ/バイ・セクシャル/トランスジェンダー)市場」を攻略せよ!【2】~米国では無視できない巨大市場に

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日本と違い、米国ではLGBTと企業との間に、緊張感のある空気が流れている。LGBTに対する取り組みや考え方は指標として点数化され、それはバイヤーズガイドとして活用されている。 本誌・池冨 仁、臼井真粧美、柳澤里佳、片田江康男(ダイヤモ...もっと読む

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Keiko_Ueda33 LGBT市場は米国では無視できないほど巨大市場に!!https://t.co/yvcNHarTyW 約5年前 replyretweetfavorite