赤ワインはこの2つをおさえておけば間違いなし!

「ワインは種類がたくさんあって難しそう」と尻ごみするかたも多いかもしれません。でも赤ワインは「ボルドー系」と「ブルゴーニュ系」の2つをおさえておけば大丈夫。
「正義は安さにあり」がモットーのワインライター葉山考太郎さんに、ワインの味からレストランや家で飲むときの秘訣を教えてもらう本連載。第2回目は、赤ワインについてのお話です。記事末コラムでは「お金をかけずに相手がものすごく喜ぶ、ワインの意外なプレゼント法」をご紹介!

私の独断で世界のワインを無理やり分類すると、以下の5つになる。

(1)ボルドー系の渋くてどっしりした赤ワイン

(2)ブルゴーニュ系の酸味がありエレガントな赤ワイン

(3)辛口の白ワイン

(4)超甘口のデザート・ワイン

(5)シャンパーニュを頂点とするスパークリング・ワイン

今回は、この中から、赤ワインの双璧である(1)と(2)を取り上げる。世界中のワイン愛好家は、必ず、ボルドーかブルゴーニュのどちらかに熱狂している。この2つを押さえておけば、赤を制覇したと言ってよい。以下、それぞれを簡単に解説する。

ボルドーの赤ワインは、人間に例えると「渡辺謙」

1.ボルドーの赤

ボルドーの赤ワインは、色が黒に近く、重厚で渋みが強い。ワイン界の王様として銀河系で最も威張っており、日本の都市なら「東京23区」、人間なら渡辺謙みたいに渋い男優、料理なら東京風の濃い味付けだ(ブルゴーニュは「京都」、「カトリーヌ・ドヌーヴ」、「関西風」)。ドッシリ系が好きな人は、ぜひ、ボルドーを試してほしい。炭火で焼いたステーキみたいに、ガツンとした食事と絶妙の相性を誇る。

ボルドーの赤は、どっしりずっしり重くて、渋くて、黒い。試飲会でボルドーを50種類もテイスティングすると、歯と舌が紫に染まり、唇に黒い線が着く。なので、試飲会の帰りに友人に会うと、「ボルドーの試飲会に行ってきたの?」と聞かれたりする。長期熟成するのがボルドーの特徴だ(逆に言えば、20年、30年寝かせて、渋みが丸くならないと真価を発揮しない)。

ボルドー系の赤は、カベルネ・ソーヴィニヨン(略して「カベソー」)とメルローいう葡萄で作る。逆に、この2つで作っていれば、どこで生産してもボルドー系と呼ぶ。この2つと、ブルゴーニュ用のピノ・ノワールが「赤ワイン用葡萄の御三家」だ。赤ワイン用の葡萄は、この3つを覚えるだけで十分。

赤ワイン用ブドウの御三家

●カベルネ・ソーヴィニヨン(ボルドー系)
●メルロー(ボルドー系)
●ピノ・ノワール(ブルゴーニュ系)

ボルドー系のこの2種類を覚えておくと、ものすごくハッタリが効く。この2つの葡萄は世界中で栽培しているので、チリ、カリフォルニア、オーストラリア、ニュージーランドなど、世界中でボルドー系の赤ワインを作っている。ボルドー系の赤を見分けるのは超級簡単で、寸胴型のボトルに入っていれば、これだ(ブルゴーニュ系は、なで肩の「小型一升瓶」に入れる)。

1本軽く5万円はする「5大シャトー」とは

ボルドーの赤ワインの頂点に君臨するのが、ラフィット、ラトゥール、シャトー・マルゴー、オー・ブリオン、ムートンといういわゆる「5大シャトー」だ。ワイン通を自認する世界中の正統派が注目し、時間と全収入と家族を犠牲にして集めるのがこの5大シャトーだ。ワインのプロは、「シャトー・マルゴーは女性的で、ラトゥールは男性的だね」とコメントするが、目隠しで飲むと、どれもものすごく渋くて、「どこが女性的なんだろう?」と思ってしまう。

5大シャトーは、一部の例外を除き、他のボルドーに比べて、圧倒的に威張っていて高価。1本軽く5万円はする。なぜ、こんなに高いのか?

答えは、「品質」と「社会的地位」の両方がトップレベルだから。「社会的地位が高い」とは、「メドックの格付け(ワイン界で、単に「格付け」と言えばこれを指す)」で最高の1級にあるためだ。「メドックの格付け」は1855年に定めたもので、ナポレオン三世が同年のパリ万国博覧会へ世界中から来る観光客用に、分かりやすいワインガイドを作れと、ボルドー商工会議所に丸投げした。面倒なことを押し付けられた商工会議所は、当時の価格だけを考慮して、3,000あるといわれたシャトーの中から61を選び、1級から5級に格付けした。この格付けは、『月刊グルメ・マガジン』の付録みたいな気楽なものだったが、何でも格付けしないと気が済まないフランスでは、じわじわと権威が付き、ついには絶対的なものになった。

格付け制定から160年以上経った今、さすが、最高位の1級は高品質だが、2級以下の格付けシャトーの中には、見る影もなくボロボロになったところも少なくない。でも、「腐っても鯛」で、この格付けは現在でもそのまま生きている。

最高位の1級シャトーが5つしかないのがミソで、簡単に覚えられる(ブルゴーニュの最高位である特級は40以上もあって、覚えきれない)。また、1級から5級まで、実力はともかく、「政治的な」格の高低が明確なのも、ワインに詳しくない人には嬉しい、よって、中国では、ボルドーの1級は、「あなたを最高の物でもてなしています」ことを見せたい接待用ワインとしての人気が非常に高い。5大シャトーは生産量が非常に多く、各シャトーで30万本~40万本も作っていて、お金さえ払えば、簡単に入手できるのも、中国には嬉しいはず。

私がワインを飲み始めた頃は、5大シャトーの当たり年でも、8,000円以下で買えた。今、その10倍も払う体力と財力はない。で、ボルドー系が飲みたいときは、チリやカリフォルニアに逃げている。チリ・ワインは、「安旨ワイン」のイメージが定着しているが、実は、超優良ヴィンテージの5大シャトーと正面から喧嘩して、軽くKOする超高級赤ワインも作っている(例えば、エラスリス社のヴィニエド・チャドウィックに勝てるボルドーってあるんだろうか?)。チリの1,000円台のワインは、驚くほど美味い。

ブルゴーニュは、「ちょい悪オネエサマ」

2.ブルゴーニュの赤

王者、ボルドーの赤ワインに対抗するのが、ブルゴーニュの赤だ。色は淡く、香り高く酸味がきれいなブルゴーニュの赤はボルドーと正反対。ボルドーが、朝5時に起きて剣道の寒稽古に励む真面目な青年としたら、ブルゴーニュは、感情のままに美や快楽を追い、門限破りは当たり前の「ちょい悪オネエサマ」。日本の都市なら、妖しく怪しい京都、人間なら、知性ある官能のカトリーヌ・ドヌーヴ、料理なら、関西風の淡い味付けだ。圧倒的にブルゴーニュ派の私は、極上のブルゴーニュを飲むと、身体中に香油をすりこんだアラビアンナイトのお姫様とヌメヌメねばねば裸で抱き合っている官能を感じる(もちろん、私の妄想デス)。

ブルゴーニュにハマった愛好家は、お金だけでなく、運にも恵まれないと極上のワインを買えない。身体を切られる思いで大金を払い、しかも、コルクを開けて飲むと、ハズレか大ハズレのどちらか。4年に1度、大当たりし、その思い出だけで残りの3年と364日を生きるのだ。真正のドMを体験したければ、ブルゴーニュにハマるといい。

ブルゴーニュの頂点が、1本100万円という世界最高価格のロマネ・コンティだ。ピノ・ノワール(略称はピノ)という葡萄で作る。ピノ・ノワールは、お姫様育ちのわがままな葡萄で、少し寒くなったり暑くなっただけでブリブリ文句を言う。この贅沢娘的な葡萄が完璧に育つのは、世界中でブルゴーニュ地方だけと言われていて、ここの1km×40kmほどの地区(甲子園球場が120個しか建たない)が「神に選ばれた土地」なのだ。1種類だけを数十万本も作る大企業がボルドーなら、テニスコートほどの狭い畑で細々と何種類も作るのがブルゴーニュ。ボルドーが、トヨタや日産なら、ブルゴーニュは、父ちゃんが社長、母ちゃんが副社長で遣り繰りする町工場。でも、作る製品は世界一なのだ。

高品質のボルドー系は世界中でできるが、官能的なブルゴーニュ系は、生産量がボルドー系の500分の1とか1,000分の1と非常に少ない。したがって、ボルドー系に比べて、圧倒的に高価だ。あらゆる葡萄の中で、最も高価なのがピノ・ノワールだろう。

「貧乏なブルゴーニュ好き」はどうすればいい?
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ワイン恐怖症のためのワイン入門

葉山考太郎

「ワインに興味があるけれど、難しそう」と、ワインに恐怖心を抱いている人は多いのではないでしょうか。そんな人に向けて、「正義は安さにあり」がモットーのワインライター葉山考太郎さんに、ワインの味からレストランや家で飲むときの秘訣を教えてい...もっと読む

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コメント

nesssea だいたいあってる。イタリアのピノネロも安旨多め 8日前 replyretweetfavorite

tomshirai ボルドーが好き。 10日前 replyretweetfavorite