日本の夫婦は、気持ちを伝え合わなすぎ?

最近、映画を観る機会が多くなった中村さんは、日本映画とフランス映画では、そこで描かれる夫婦のコミュニケーションがまったく違うことに気が付きました。その違いとは……?(※この記事では、映画『クリーピー 偽りの隣人』のネタバレを含みます。これから観る予定の方はお気をつけください。)

こんなに違う、日仏の夫婦コミュニケーション

日本にも猛暑が訪れているようですね。こちらフランスはエアコンが無いのが普通なので、気温が37度まで上がる連日、涼しい映画館に避難していました。日本と違って、フランスの映画は回数券で買うと7ユーロ程度(約900円)と随分安く、誰でも気軽に通えます。とはいえ、さすがに毎夜通っていると観たい映画もなくなってきて、普段は選ばない映画まで観ることになりました。

それでも意外と楽しめたのは、『クリーピー 偽りの隣人』という、日本では1年程前に上映されていたミステリーもの。もうひとつは、フランス映画『Ce qui nous lie』(直訳:私たちをつなぐもの)という人間ドラマでした。この2つの映画はストーリーも舞台もまったく違うものですが、どちらの映画の中にも「夫婦関係」の描写があり、とても興味深いものでした。

日本でもフランスでも、どの夫婦にもそれぞれ違った関係があるはずですが、とはいえ連続で日本とフランスの映画を観たことで、はっきりと日仏の夫婦関係の違いを比べることができ、面白いほど両極端だなと感じました。今回は、その違いがどのようなものだったのか、紹介してみようと思います。

日本の夫婦は、ストレートに気持ちを伝え合わない?

映画「クリーピー」に登場するのは、40代の子供なし夫婦。新しい土地に引っ越してきて、ご近所に挨拶周りをする中、お隣さんが変だということに気がつきます。映画が進むにつれて、このお隣さんが実は殺人犯だとわかるのですが、彼に奥様がどんどん毒され、しまいには夫婦共々巻き込まれてしまうというもの。

この奥様は、元刑事でいまは教員の夫の帰りを、手料理を用意して迎える専業主婦。夫が帰宅した際に台所から「(玄関まで迎えにいけなくて)ごめんなさい! いま手が話せなくて」と、謝るような女性です。うーん。いまどき、こんな専業主婦どれくらい存在しているんだろう?と思ってしまったのは、私が共働きが当然のフランス社会に染まってしまっているからなのでしょうか。

ともかく、この夫婦は美味しそうな手料理を食べながら交わす会話もこれまたつつましやかで、大人しいのです。夫が料理を「美味しい」とほめ、うれしそうに微笑む奥様。その日あったことをお互いに報告をしあう、平和な様子が描かれています。それが、だんだんと隣人に毒されていく奥様の変化を雰囲気で感じとった夫が「今日、なんかあったの?」とようやく訪ねるのですが、彼女は「ううん。なんでもない」と答えて、コミュニケーション終了。

「えええ!? 何でもなくないよね!?」と、その浅く、当たり障りのなコミュニケーションに、ズッこけそうになってしまいました。もちろん、映画のストーリーを追う観客として「夫よ! 奥様の異変に気づかないと危険が!」とやきもきする気持ちもありました。しかしそれと同時に、どうしても「なぜ、この奥様は自分の気持ちや感情を伝えないで我慢してしまうんだろう?」という疑問で、頭が一杯になってしまったのです。

それ以降、どんどん隣人に毒されていくにも関わらず、彼女は夫に助けを求めるわけでも、感情を吐き出すわけでもなく、ジワジワと泥沼へはまっていきます。そんな奥様の変化に、仕事にのめりこんでいる夫はもはや気づくこともなくなってしまうのです。こうした一連のシーンは、ドキドキ感を増すための演出なのでしょう。それにしても、この映画で描かれている夫婦のコミュニケーションは、感情や思いを押さえ込んで表に出さないようにしている点が、とっても日本的だなと感じたのでした。

本音の部分、思っていること、感じていること、特にネガティブなことに関しては、すぐに言葉にして伝えない。そして、ネガティブな感情は溜め込まれていき、ある時に爆発する。こういうパターンって、心当たりのある女性も多いのではないでしょうか? 実際この映画の最後は、ようやく奥様の感情がせきを切って溢れ出て、気が狂ったように泣き叫ぶシーンで終わっています。

フランス人夫婦は、感情をストレートにぶつけ合う

この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
パリジャン十色

中村綾花

“花の都”と称され、雑誌やテレビでもその優雅なイメージが特集されることの多い、フランスの首都・パリ。パンやスイーツはおいしいし、ファッションは最先端だし、歴史ある建物たちも美しいし、住んでいる人もおしゃれな人ばかり……と思いきや、パリ...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

Syuri_Voice 私はフランス人よりだったのか!(笑) 2年以上前 replyretweetfavorite

komachibypass "日本人は、もっと自分の思いや感情を押さえ込まず、上手でなくていいから、「嫌なこと」「うれしいこと」をまずは口に出して相手に伝..." https://t.co/RMBpxpKQP4 https://t.co/d4uUHSDPxT #drip_app 2年以上前 replyretweetfavorite

ayakahan いよいよ公開!|[今なら無料!]生粋の日本育ち女子がのぞいた、常識やぶりなパリジャンたちの素顔 2年以上前 replyretweetfavorite