学校との相性を考える
子どもを伸ばすための学校選びと、将来を見据えた育て方について、私なりの意見を述べたいと思います。
当たり前のことですが、子どもを伸ばすうえで、学校選びはとても重要です。いわゆる〝偏差値の高い学校〟や〝伝統や格式のある学校〟を選べと言っているわけではありません。もっとも重視すべきは、やはり子どもや保護者との相性。学校の方針が、家庭の考えと合うか合わないかです。
仮に「偏差値は高いが方針に共感できない学校」と「偏差値は少し劣るが、方針には共感できる学校」の2つがあれば、私は迷わず「後者を選んだほうがいい」とアドバイスします。それほど、学校との相性というのは子どもの人生を左右するものだと思います。
たとえば、すでに何度もお伝えしているとおり、日比谷高校では課外活動を重視しています。3年の9月まで文化祭に全力投球してもらいます。そのために、できる限りの広報活動を行っているつもりなのですが、やはりどうしても入学してから「集団で何かをやるのはあまり好きじゃない」「勉強だけに集中したい」と言い始める子どもが出てきてしまいます。
私はそういう子も否定はしません。自分のペースで行動するのが好きな子はいますし、「高校では勉強だけに集中させたい」という家庭もあると思います。
ただ残念なのは、結果として学校と家庭のミスマッチが起こっているという事実です。高校側からすれば、大勢いる中の一人に起こったミスマッチですが、本人にとっては学校すべてが自分とミスマッチになってしまい、苦痛を強いられることになります。いちばんの被害者は、合わない学校を選んでしまった子ども本人です。
ゆえにまず、入学前に保護者や子どもたち自身が、心からその学校の方針に共感できるかを考えてもらいたいのです。
どんな3年間になるかがここで決まりますから、ぜひ慎重に吟味してください。
学校方針に共感できるか慎重に吟味する
今、日比谷高校では、学校の理念に共感してくれた子どもたちが集まり、それを体現した高校生活を送って、新たな入学希望者を呼び込むような実績を残しています。充実した高校生活を送った子どもたちが、東大などの難関大学を次々と突破し、その事実を見て、さらに優秀な中学生たちが集まって来る。この好循環が実現しているわけです。
大事なポイントは、やはり子どもたちと保護者に「日比谷高校はそういう学校なのだ」と、しっかり理解して入学してきてもらう、という点でした。
単に偏差値や学費などだけで決めてしまい、入学してから校風が合わない、ということでは、子どもたちの成績も気持ちも下がる一方だったと思います。
あるいは、学校が「部活も行事も全部がんばれ」と励まし、本人も一生懸命に取り組んでいるのに、保護者が家庭で「部活なんて勉強の邪魔だから早くやめなさい」と言っていたら、間に挟まれた子どもたちが戸惑うばかりだったでしょう。
もちろん私のところへは、今も保護者からのさまざまな意見が届きます。
「もっと早い時期から受験体制に入ってほしい」
「なるべく受験に関係のある科目だけに特化してほしい」
「部活はできるだけ勉強の負担にならないようにしてほしい」
こういった意見も当然あります。
しかし、多数派になることはありません。保護者のほとんどは、学校の考え方をよく理解してくれているからです。校長としてとても感謝しています。
家庭と学校で、大人の言うことが異なると、子どもはストレスを感じます。迷います。保護者と学校がお互いに理解し合い、共感し合うことが、子どもの真っ直ぐな成長につながりますし、それ自体が将来への推進力になります。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。