渋谷音楽図鑑

幻となった4枚目のアルバム

『渋谷音楽図鑑』(太田出版)の第5章もクライマックス。ついに完成したサード・アルバム『ヘッド博士の世界塔』。轟音と嬌声が響き渡るツアー。混乱するフリッパーズに提案された「日仏英同時リリースのフォース・アルバム」。しかし、その計画が実現することはなかった――。

幻となった4枚目のアルバム

 こうして91年7月10日、『ヘッド博士の世界塔』がリリースされました。アルバムの初回出荷枚数は8万枚。反響も大きかった。あっという間に20万枚を超えていくのが見えていた。急な坂を駆け上がるような感じでした。

『ヘッド博士の世界塔』(1991年)のプレスリリースに掲載された“セルフ”ライナーノーツ

 リリース後には東名阪ツアーをやりました。もう人気はデビュー時とは比べ物にならないものだったけれど、東京はやはり渋谷クラブクアトロだった。ただ、ツアーでも彼らが抱えていた問題は顕在化していました。ノイズそのものにしか聴こえないような轟音が大音量で鳴っていた。オイルアートを使ってサイケデリックなムードを作ろうと演出していたけれど、それはあまり効果的には見えなかった。

 僕は危惧していたことが表面化したと思いました。ドラッグのカルチャーがない日本で、その影響下で生まれた音楽をライブでそのままやろうとするのは難しかったんです。

 それで僕は彼らに忠告しました。ただし、まだその頃は彼らが解散するなんて誰も思っていませんでした。おそらく本人たちもそうだったと思います。

 実際、そのときのふたりは「もっとツアーをやりたい」と言っていました。何度かのライブを経て自分たちの音楽をちゃんと表現する方法が見えてきた。それでもう一度ツアーをすることになりました。

 実は次の作品、4枚目のアルバムを作ろうという話をしていました。

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渋谷音楽図鑑

牧村 憲一,藤井 丈司,柴 那典
太田出版
2017-07-05

この連載について

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渋谷音楽図鑑

牧村憲一 /藤井丈司 /柴那典

シュガー・ベイブ、山下達郎、大貫妙子、竹内まりや、加藤和彦などの制作・宣伝を担当、80年代後半からはフリッパーズ・ギターをプロデュース。解散後は「トラットリア」を設立――。そんな音楽プロデューサー牧村憲一さんが「渋谷」で出会った音楽、...もっと読む

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コメント

POP_ID https://t.co/CQAYjP9446 約3年前 replyretweetfavorite

Satoriginal 「ヘッド博士」の新しさにヤラれた人は、フリッパー解散後ヴィーナスペーターに流れたんだろうな 約3年前 replyretweetfavorite

cntstaff ついにリリースされたサード・アルバム『ヘッド博士の世界塔』。混乱するフリッパーズに提案されたフォース・アルバムの計画とは――? 明日のフジロック前に是非とも読んでいただきたい『 約3年前 replyretweetfavorite