出口の見えなかった『ヘッド博士の世界塔』
『カメラ・トーク』以降、フリッパーズ・ギターの音楽性が変わり始めた最初のタイミングが、彼らが「GROOVE TUBE」という曲を作っていたときでした。
レコーディングが行われたのが90年の年末から91年の1月にかけてのこと。そこで彼らはサンプリングに取り組み始めます。サンプラーを使ってループを作り始めた。当時のイギリスではストーン・ローゼズなどマンチェスターにいるバンドたちが新しい試みを始めていて、その潮流をいち早く取り入れようとしていた。
どの時代も、洋楽の影響下にあるアーティストはムーブメントと同時進行の音楽に挑戦する。新しい動きをいち早く理解して、本質的なところで共鳴したものを作ろうとする。だから彼らもサンプリングを駆使したレコーディングに入っていったわけです。
「GROOVE TUBE」(1991年)の非売品CDジャケット用ステッカー
91年の春頃からサード・アルバムの『ヘッド博士の世界塔』のレコーディングが本格的にスタートしました。
ただ、僕にはこれまでとはどこかムードが違っているように思えた。
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