子どもをノートに向かわせるのは、「北風」か、「太陽」か。(shutterstock)
子どもが勉強しないときに
子育ての代表的な悩みの一つに、「いくら言っても子どもが勉強しない」というものがあります。一見、勉強が好きそうに見える日比谷生にも、そういうことはあります。すでにお話ししたように、私たち教員がこれほど熱心にかかわり続けても、子どもの気持ちが勉強に向かわないときは、あるものなのです。
子どもが勉強をしないとき、遊んでばかりのとき、成績が上がらないとき、それどころかどんどん下がってきているとき。大人は焦りを感じます。
普通はここで「勉強しなさい!」と叱ることになるでしょう。けれど、叱りたくなったら、とりあえず一瞬ぐっとこらえてみてください。
彼らはただ、逃げているだけなのです。本当は彼らも、やらなくてはいけないことはわかっている。でも今は、なんらかの理由でやりたくない。
そんなときに無理やりやらせても、ますます反発するだけです。
では、親は何をしたらよいのでしょうか。
答えはシンプルです。
それをすることの意味を伝え、本人にどうすればいいのかを考えさせる。問いかけ、待つのです。
会話の途中に、「3年後、5年後の自分はどうなっている思う?」と、子ども自身に考えさせる問いかけを織り交ぜるのもいいのではないかと思います。そして最後は、待つ。
子どもはやらなくてはいけないことはわかっている。でも、できない。それは、将来に対する漠然とした不安とか、勉強の意義を見出せないとか、ただ単に反発したいとか、本人にも整理のつかない感情が邪魔しているせいかもしれません。ですから、何かの出来事や、誰かの言葉がきっかけとなって、必ず変節点が来るのです。親は、それを信じて、待つ。決して急かしてはいけません。
待つのは辛いことだと思います。先が見えないからです。感情に任せて「勉強しなさい!」と叱ってしまったほうがてっとり早い。でも、待たなくてはいけないのです。子どもを変えたいと思ったとき、大人に求められるのは「見守る勇気」です。
見守るということ。寄り添うということ。それは我が子を信頼するということです。
信頼感は、必ず子どもに伝わります。突き放した言い方に聞こえるかもしれませんが、親が信頼を示したうえで、なお子どもが「勉強しない」ことを選択するのであれば、その考えを尊重するのもまた、信頼だと私は思います。
「勉強する意味」を、親が自分の言葉で伝える
先ほど、親は子どもに「学ぶことの意味」を伝えるべきだとお伝えしました。なぜ勉強するのか。大人でも明確に答えられない問題です。100人いれば、100通りの考えが生まれてくるでしょう。
私なりの答えを挙げるなら、勉強は「世の中の役に立つため」にするものだと思います。もう少し堅い表現を使うならば、「人類に貢献するため」です。
学問を修めることにより、人間力を高め、世界をよりよく導けるリーダーとなる。そして、より多くの人を幸せにする。言葉にすると大げさに聞こえますが、日比谷生にはそうあってほしいと思っています。実際、日比谷高校の卒業生の多くは、それが可能な立場に将来、就いていくわけです。
ただこれは、あくまでも私の主観です。「勉強の意義は人類貢献」だというのは、私個人の価値観にすぎません。
それでいいと思うのです。
なぜなら、私が自分なりに突き詰め、辿り着いた結論だからです。誰かに言わされているわけでも、押しつけられているわけでもありません。自分で見つけた答えだから、信念を持って子どもたちに伝えられるのです。
親子でも同じだと思います。親が真剣に考えて見つけた答えをぶつけるからこそ、子どもたちも真剣に考える。そういうものではないでしょうか。
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