みじめな気分のときのお金の使い方
「同じ大学出身の同僚が、自分より先に出世したんです……」
消え入りそうな声で話をはじめたのは、私のセミナーの常連、印刷会社に勤めるMさん(35歳・男性)だ。
Mさんは、かねてよりライバルだった同僚の出世を知り、大きなショックを受けて仕事に身が入らなくなってしまったらしい。
さらに悪いことに、今まで行ったことのなかったキャバクラに通うようになり、女の子にお金を注ぎ込んでしまい、借金までしているのだという。
「自分でも、ここまでハマるとは思ってもみませんでした……」
同情の余地はないのだが、Mさんがショックを受けた気持ちはわからなくはない。
同じ年で、同じ大学出身。今まではすべて同じだったのに、向こうは課長、Mさんは平社員のまま。
まわりから比較されることが多ければ、なおさら辛いだろう。
自分にないものを人が持っていると、人はみじめな気分になる。
恋愛などでも、同じようなことがある。仲の良かった友だちに恋人ができると、恋人のいない自分が急にみじめに思えたりするのがそれだ。
今までは似た者同士だったはずなのに、なんだか裏切られたような、置いてきぼりにされたような情けない気持ちになるのだ。
そうなると人は、逃げるようにお金を使ってしまうことがある。
キャバクラにハマッてしまったMさんがまさにそれだ。
みじめなときに、お金を使ってはいけない。
人が、自分にないものを持っているからといって、そのむなしさをお金で補おうとしてもどうにもならない。
むしろ、お金を使えば使うほどむなしさはつのり、よけいみじめな気分になってしまうだろう。そしてまたお金を使う……と、絵に書いたような悪循環をくり返すのだ。
みじめな気分になるのは、自分と人を比較しているからだ。
人と比較すれば、相手のほうが優れていたり、先に何かを得ていたりすることは当然あるに決まっている。それを、「俺も負けてなるものか!」と自分の発奮材料にして頑張るなら、それもいいかもしれない。
しかし、「あいつはアレを持っているのに、俺にはない……」。そんなふうに落ち込むだけなら、今すぐ比較するのをやめたほうがいい。
「比較するのをやめたって、しょせん負けは負けでしょ。それじゃあ、何の解決にもならないんじゃないの?」
そんなふうに思う人もいるだろう。
しかし、人生は先を行く者が勝つとは限らない。
人生は長い。マラソンのようなものだ。
横並びでスタートすれば、途中で引き離されることもあるだろう。
だが、人生というレースはゴールするまで何があるかわからない。
途中経過で一喜一憂したところで、それが何になるというのだろうか。
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