世界で一番、優しい目

星太朗のもう一つの願いは、ぬいぐるみのムッシュに新しい友達を見つけること。星太朗と一緒にいく、と覚悟を決めていたムッシュは、友達になれる人なんていないと声を荒らげるのだったが……。
ぬいぐるみと出版社校正男子の切なさMAXの友情物語小説『さよなら、ムッシュ』を特別掲載!
イラストは、なんと松本大洋さんの描きおろし!

 ムッシュはそこまで読んで、ぴたりと手を止めた。

 振り返って星太朗を見る。

 何を聞いていいのか、何から聞けばいいのか、わからなかった。

 星太朗はおもむろに膝をつくと、本棚の上段を眺めた。その棚には、二人の、特にお気に入りの本が並んでいる。

「……僕も、思ってた。九個じゃ中途半端だなって」

 星太朗は母の本を一冊ずつ丁寧に取って、テーブルに置いていく。

 本棚の中から顔を出した壁に、小さく、でも力強く、星太朗の字が書かれていた。


 ⑩ムッシュの新しい友だちを見つける


「何これ……。ダメだよそんなの! 何だよこれ! 言ったでしょ、ぼくもせいたろと一緒にいくって!」

 ムッシュは大声を上げた。

 星太朗は落ち着いて、ゆっくりと言葉を返す。

「いや、いけないよ」

「ダメ。それだけはきけない」

 ムッシュは怒る。

 そんなことは、ありえないことだ。許せないことだ。

 星太朗から顔を背けて、全身でその意思を伝える。

「頼むから」

「無理だって。叶えられないよ」

「頼むって」

「無理!」

「頼む。お願い」

「無理!!!」

 ムッシュは声を荒らげると、襖を突き破りそうな勢いで逃げていった。

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さよなら、ムッシュ

片岡翔

あの日。気がついたら、その子は話しはじめていた。コアラのぬいぐるみのはずなのに。 それ以来、彼はそのことを20年間秘密にして、生きてきた――。 気鋭の新人映画監督・片岡翔が初めて小説『さよ...もっと読む

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