後輩への正しいおごり方
講演会活動を長くやっていると、お客さんからいろいろな質問を受ける。
投資に関する専門的なことを聞かれることが多いのだが、中には、ちょっと変わったことを聞いてくる人もいる。
最近印象に残っているのは、薬剤師をしている女性、Eさん(28歳・独身)からの質問だ。
講演会の終わり頃、こんなことを私に聞いてきた。
「後輩から逃げるには、どうしたらいいですか?」
唐突にそう言われて、一瞬、私は返事に詰まった。
「え? 後輩から逃げる? どういう意味ですか?」
「そのままの意味です。私、いつも後輩から逃げまわっているんです」
質問が要領を得ないので、私はひとつひとつ解明していかなければならなかった。
「後輩から逃げているのはなぜですか?」
「後輩にランチをおごらないですむようにです」
「毎回、ランチを後輩におごらなくてはならないんですか?」
「はい。だって後輩とごはんに行ったら、普通はおごるものでしょう?」
ようやくEさんが何を言いたいのかわかってきた。どうやら彼女は、先輩後輩の関係で苦しんでいるようだ。
「別に、あなたが先輩だからといって、毎回おごる必要はないんじゃないですか?」
するとEさんは、何か珍しいものでも見るかのように、私の顔を見つめ返した。
「私、今まで後輩にはおごるのが常識だと思って、ずっとそうしていたんですけど、そんなことはないんですね?」
先輩だからという理由で、いつもいつも後輩におごる必要はない。そんなことをしていれば、すぐにお金がなくなってしまう。
ましてや20代の頃は、給料だってそんなにもらえるわけではないから、なおさら辛いだろう。
かといって、まったくお金を出さないのも先輩としてどうなのか?
小さな悩みではあるが、Eさんにとってはとても深刻な問題だったのだろう。
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