靴、財布、鞄。一番お金をかけるべきなのはどれ?
私が子どもだったころ、休みの日になると、父はいつも玄関に座って靴を磨いていた。
父は営業畑の人だったから、足元には気を使っていたのだろう。
背中を丸めて靴を磨く父の後ろ姿を見て育った私は、今、父と同じように背中を丸め、靴の手入れをしている。
塾をやめ、父親の保険会社を継いで、自分の体制を作りあげた頃、仕事のことで相談があって、国内トップクラスの某コンサルティング会社のコンサルタントの方に会いに行ったことがある。
そのとき、その方が私の足元を見て、「靴、大事にしているね!」と大変褒(ほ)めてくださったことを今でもよく覚えている。
なぜか、仕事の解決策そっちのけで、靴のことばかり褒められた。
私が身につけているものの中では、靴にいちばんお金がかかっているかもしれない。
けれども、良い靴を買うのは、先ほどのノスタルジックな思いからだけではない。
靴は、自分の身体の一部のようなものだ。身体に触れている時間も長い。
靴の良し悪しは、身体の疲れ方に大きな影響を与える。だから、できるだけ良いものを選んで履きたいと考えているのだ。
鞄や財布を良いモノに変えても、身体の疲れ方がやわらぐわけではない。
私は今、ジョギングに凝っているので、シューズを選ぶ機会が多いのだが、どんな靴を履くかによって身体に与える影響がぜんぜん違うのがよくわかる。
長く走っていても重さを感じないし、疲れない。走り終わった後も、足がだるくなることが少ない。こんな体験をしてから、ますます靴の重要性を感じるようになったのだ。
靴と同様の理由でお金をかけたのが、ベッドだった。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。