いくつも資格をとるより、ひとつの語学を徹底的に磨け
事務用品メーカーに勤めている、知り合いのK子さんは資格マニアだ。
簿記、色彩検定、アロマテラピー検定、ホームヘルパー……。
このように、仕事の専門とはほとんど関連性のない資格をあれこれとっている。
ある日、私は思いきってK子さんにこう尋ねてみた。
「なんでそんなに資格をいっぱいとるの?」
「不安で仕方がないからですよ」
「不安って、何が?」
「自分の将来に決まってるじゃないですか!」
どうやらK子さんは、将来が不安だから資格をとっているらしい。
「じゃあ将来、起業か何か考えてるの?」
「え、そんなことぜんぜん考えてませんよ。何かの役に立つんじゃないかと思って、気になった資格をとってるんです」
K子さんの行動力とチャレンジ精神は素晴らしい。
しかし、K子さんには申し訳ないが、「ほんとうに仕事ができる人は、資格をたくさんとったりはしない」というのが私の持論だ。
なぜなら、自分の仕事に役立つ資格は、せいぜいひとつかふたつで、それ以外の資格を手当たり次第にとっても、ほとんど無意味。お金と時間の浪費でしかないからだ。
仕事ができる人は、それをわかっているので、本当に必要な資格を取得することにだけ、時間と労力をかける。
とは言いつつ、実は私も塾講師をしていた20代の頃、あれこれと資格をとろうとして失敗した経験がある。
行政書士や司法書士、そしてなんと大それたことに弁護士の資格までとろうとしていたのだ。
なぜそんな難関の資格ばかりとろうとしていたか。
それは、自分に自信がなかったからだ。
とにかく、聞こえの良い資格を取得して、まわりから「すごい」と思われたかった。
しかし当然のことながら、大金を注ぎ込んで予備校に通っても、結局、どの資格もとれずに終わってしまった。
……なんとも、もったいない話である。
しかし万が一、行政書士などの資格を取得できていたとしても、その資格をうまく活用することは難しかっただろう。
なぜなら士業というのは、一見、個人が独立して仕事をしているようなイメージが強いが、実際は資格をとったあとに、どこかの事務所に所属して、何年か修業するのが一般的だからだ。
いきなり独立してガッポリ稼ごうと思っても、何も実績がない人に、いきなり仕事を依頼してくるお客さんなどいない。
ましてや、最初からその業界にいるのではなく、転職して参入するとなると、余計にハードルは上がってしまう。
不利な戦いを強いられる戦場に、わざわざ出ていくのは得策とは言えないだろう。
しかし不安定な世の中……。何か武器を身につけておきたい。そう考える気持ちはよくわかる。
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