この世でいちばん楽しい恋愛の形態は、不倫だという説がある。
そりゃそうであろう。おかげさまで私が書いた小説(『不機嫌な果実』)も、ベストセラーになった。不倫というのは、独身の女の子と、妻子持ちの男という組み合わせが一般的であるが、この場合は女の子の方はあまり得をしない。本気になればなるほど苦しむ仕組みだ。揚句の果ては、不倫相手の子どもを焼き殺したようなOLだって出てくる。不倫が楽しく、美容効果があるのは主に人妻の場合であろう。私のまわりでも何人かいるが、みんな肌も艶々、ぐっとおしゃれになってエステに行くよりよっぽどいいかもしれない。
私がよく行くエステの先生は、 「とにかく好きな人をつくりなさい」 と言う。 「何も男と女の関係にならなくてもいいの。綺麗な格好をして男の人とデイトをする。そして待ち合わせ場所に向かう。その際にちょっと鏡を見る。その間に女性ホルモンが急上昇していくのよ」
と教えてくれた。私はヒトヅマであるが、デイトする男の人は何人もいる。が、本命といおうか、胸がぐっと締めつけられるような男は皆無といってよい。ひとりものすごくハンサムな商社マンがいて、かねてから目をつけているものの、彼は奥さんのことをすごく愛していていつもその話ばかりするからイヤ。
さて不倫は別にして、健全な範ちゅうに入る恋愛の中で、何といってもいちばん楽しいのは、グループ交際の中の抜けがけというやつであろう。これはミニ不倫といってもよいくらいわくわくする。グループの中の自分以外の女は、彼の本妻と見たてると話はわかりやすい。本妻たちは彼に対して格別の愛情を持っているわけではないが、人にとられるのをとても嫌う。それをかいくぐってつき合っていくスリルときたら、もうたまりません。