長寿のお酒と銘打った「オールド・パー」というお酒があります。15世紀から17世紀にかけて、実に152歳まで生きたと言われるイングランド人、トーマス・パーにちなんでその名が付けられています。
パーは菜食主義で、精製されていない黒パン(ライ麦パン)など質素なものを主食にしていました。そんな彼の死後、遺体を解剖してみたら、その年齢にしては驚くほどに腸が若々しかったと言われています。
そう、私たちの体にとって腸の働きはとても大事。腸次第で体全体の調子が変わると言っても過言ではなく、腸が健康的であることが長寿の秘訣でもあるのでしょう。
ヒト1人の腸内細菌は約300種類以上あり、数にして1兆個、重さにすればトータル1キロに上ると言われています。私たちが日常的に排出する便の構成比から見ても、全体の80%を占める水分を除いた残り20%の固形物のうち、食べかすが3分の1、古くなって剥がれた腸粘膜が3分の1、そして腸内細菌が3分の1を占めています。つまり便の7%は腸内細菌というわけです。けっして無視できない存在ですよね。
そんな腸内細菌を大別すると「有用菌」「有害菌」「日和見菌」の3つに分けられます。日和見菌とは状態によって有用にも有害にもなり得る、選挙で言えば浮動票のようなもので、腸内では常に日和見菌を巻きこんだ有用菌と有害菌の覇権争いが行われています。これらのバランスが崩れると体調が崩れ、便秘になったり下痢になったりします。
そこで、たとえばヨーグルトを摂取することで乳酸菌のような有用菌を吸収しようという考えにつながるわけですね。腸内環境を整える、つまり有用菌が幅を利かせられる状態にしていくことが体調を維持するひとつの鍵となります。
ただ、乳酸菌はあまり腸まで届かないとも言われています。腸に到達する前に、大半が胃酸で死滅させられてしまうんですね。しかもヨーグルトはもともと海外発祥のものですから、私は日本人の体には納豆や味噌、醤油、漬物といった日本古来より伝わる食べ物で乳酸菌を獲得するのがベターと考えています。
私たちはこれらを食べ続けて生き残ってきた人たちの子孫ですから、これらが体に合わない人たちは長い時間をかけて淘汰されてきたはずです。食べ物は「その土地のもの」を食べた方が体質に合うと考えるのが自然でしょう。
きっと152歳まで生きたパーも、その土地のものを食べ続け、腸の働きに支えられていたのでしょうね。遺体の解剖後に見つかった若々しい腸が何よりの証拠です。
余談ですが、彼はその人並み外れた長寿ぶりを持てはやされ、宮廷に招かれ余生を送ったそうです。しかしそれまでの質素な食生活ではなく、贅沢な宮廷料理を食べる生活が続き亡くなったと伝わっています。美味しいものを食べて亡くなるなんて皮肉な話ですよね。贅沢な食事の方が寿命を縮めてしまったのですから。
栄養分がちょっと足りないくらいの方が「生きよう」とする力が引き出され、長生きするのでしょうか。昔から「腹八分目がいい」と言われますが、パーの生涯を思えばやはり正しい言い伝えなのかもしれません。
寝ている間に若々しい体になる方法
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