パリはつい最近まで毛布が必要な日もあったのに、今週は30度を超える夏日が続いています。休日にちょっと郊外まで足を伸ばすと、太陽の光で肌を焼きながら、庭に出てバーベキューをする人を見かけます。炭火で焼く美味しいバーベキューの匂いと煙が、あちこちからたちこめてきます。
先週末、私たち夫婦もパリ郊外に住む友人家族に誘われ、今年初となるバーベキューに参加してきました。ところがこの日、美味しいバーベキューをたらふく味わうだけに終わらず、友人家族の15歳になる息子くんと、その父親の反抗期抗争を目の当たりにすることになったのです。
この体験は、フランス人の男の子が大人になる過程の一具体例を知る貴重な機会になりました。はたから見てドキドキしながらも、こうやってフランス人は子供から大人になっていくんだなぁ、と感心してしまったのです。
自分の息子がベジタリアンだったら
ことの始まりからお話しましょう。まず友人宅に到着すると、キッチンのテーブルにはバーベキュー用の肉ではなく、野菜がどっさりと準備されており、お母さんがサラダを準備しているところでした。その野菜を見て、そういえばこの家の息子くんはベジタリアンになったんだった、と思い出しました。
庭では、この家の父でもある友人が、ビール片手に火をくべ、肉を焼く準備をしていました。そして、この日のために肉専門店で選りすぐって買ってきた厚切りベーコンやピリ辛豚ソーセージ、羊肉から牛の心臓まで、一気に火にかけていきました。
ジューっという肉の焼ける音とともに、もくもくと上がる煙。その煙にあぶられて、あっというまに黒こげ寸前になってしまったけれども、しっかり焼かれた肉たちがテーブルに運ばれると、私たちは次々にほおばりました。
ひとつひとつの肉の味の違いに感嘆しながら食べる大人たちの横で、サラダとピーマン焼きしか食べない息子くん。そんな彼を目の前にすれば、話題になるのはどうしたって彼のことです。
彼がベジタリアンになった理由は、ネットで観た食用動物のドキュメンタリーの影響で、殺される動物がかわいそうになったからだそう。彼が食べないのは肉だけでなく、牛乳や卵にまで及ぶということで、その真剣ぶりに大人たちは感心するよりも、疑問や心配が隠せません。
そしてここはフランス。美味しいご飯やお酒をシェアすると同時に楽しむのは、なんといっても会話、というより議論です。大人たちはようしゃなく、息子くんに向かってあれこれと意見をぶつけてきます。例えば……。
「動物や、卵を食べることが酷いことだと主張しているけれど、動物を食べることがかわいそうだなんていう思想が目立ち始めたのはここ数十年の話じゃない? もしかしたらまた数十年後には、植物にも感情や感覚があって、食べることはかわいそう、なんて議論になるだろうね。そうしたら、君は本当になにも食べられなくなるよ」
「ベジタリアンになって、そうやって『僕にはオリジナルの思想がある』と主張するのはいいけれど、下手したら、他人の意見を受け入れられない極端な思想の人間にだってなりかねない。それが心配だ」
こんなことから始まって、議論はしまいには政治や思想の話にまで発展していきました。
大人から子供へ、思春期の攻防
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