おわりに【第63回】

全原稿を火・木の週2回で公開してきたジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』も、いよいよ最終回。昔なつかしい喫茶店のナポリタンのレシピも登場して、味わい豊かにフィナーレを迎えます。
次回からは、発売時に開催されたトークイベントでの対談をお届けします。

おわりに

 ゆるゆると、めんどうごとをとりのぞいて最後に残る自分の好きなことに心を傾け、意識を集中する。わたしは台所仕事は下準備から調理、テーブルセッティング、後片付けまですべて大好きなので、台所にいるときには「いまこの瞬間に全意識を傾ける」状態を楽しんでいます。

 食事を終えて、食器を洗い、乾いたふきんできゅっきゅっと拭く。コーヒー豆を挽いてフレンチプレスでコーヒーを淹れ、ポットやミルも洗って乾かし、最後にシンクもコンロも綺麗に磨いて、すべてを片付けてふきんを広げる。

 そしてコーヒーをゆっくり飲んで、机の前に座り、仕事をはじめます。その瞬間、わたしは「さあいままさに、自分の世界がスタートするぞ」と高揚しています。

 未来の豊かな暮らしを夢見るのではなく、暮らしをないがしろにするのでもない。ただ、いまここに生きていること。そしてこの生が積み重ねてきたことを大切にしていくこと。

 わたしたちの中に蓄積されてきた懐かしい暮らしは、わたしたちの生きている人生や過去の思い出、愛情や哀しみと密接に結びついています。ティーンエイジャーのころに親しんでいた音楽を懐かしく聴くように、質素でも古くさくてもいいから、ちょっとしたささやかな暮らしの思い出が、わたしたちの生きていく糧になっています。

 たとえば懐かしい喫茶店のナポリタンスパゲティ。

 この料理をわたしはよく思い出します。それは、思春期の甘い記憶とダイレクトにつながっている。

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

初回を読む
そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

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コメント

marekingu #スマートニュース 2年以上前 replyretweetfavorite

MAROCKs ここに書かれているナポリタンのレシピは「とても美味しい」を想像できるけれど、「昔なつかし」てな味ではない、とも断言できる。 昔なつかしならば、 にんにくは入れない、 トマトを使わず全てケチャップで、 オリーブ油ではない調理油で。 https://t.co/ib6GNKhAJl 2年以上前 replyretweetfavorite

sasakitoshinao 最終回です。昔懐かしい喫茶店のナポリタンの作り方を紹介。 2年以上前 replyretweetfavorite

anonimastudio いよいよ最終回。昔なつかしい喫茶店のナポリタンのレシピも登場して、味わい豊かにフィナーレを迎えます。 “@cakes_PR: 【最終回】佐々木俊尚『そして、暮らしは共同体になる。』 @sasakitoshinao https://t.co/oznLc0LoHl” 2年以上前 replyretweetfavorite