メディア空間につくる物語—「北欧、暮らしの道具店」/クラシコムの文化【第55回】

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』の全原稿を火・木の週2回で公開中。終章となる第4章は、著書『レイヤー化する世界』でも展開されていたテクノロジー論から、共同体の話につながっていきます。今回は独自の運営方法に注目のメディア「北欧、暮らしの道具店」さんの登場です。

メディア空間につくる物語—「北欧、暮らしの道具店」

 このヒントを、「北欧、暮らしの道具店」という生活雑貨販売サイトに見てみます。

 このお店が注目されているのは、単なる通販のお店というだけでなく、メディアのような役割も果たすという不思議なサイトになっているからなのです。つまり通販サイトの中に、さまざまな記事が掲載されているのです。

 通販サイトが、自分のところの商品を紹介する記事を掲載するのはごく普通のことです。しかし「北欧、暮らしの道具店」には商品紹介記事だけでなく、人物インタビューなど一見して商品とは関係なさそうな記事がたくさん載っていて、そちらのほうが圧倒的主流になっている。商品紹介記事はほんの少ししかありません。ウェブメディアなのか、通販サイトなのか、よくわからないんですよね。

「北欧、暮らしの道具店」を運営しているのはクラシコムという株式会社で、社員は40人ほどというとても小さな会社です。

 社長の青木耕平さんによると、もともとは普通の通販サイトだったそうです。2007年にオープンして、年々売上は伸びていったのですが、しかし利益がまったく出ない。なぜかというと、通販サイトというのは競争の厳しい業界なので、広告を出してポイント還元や懸賞のキャンペーンをやったりと、マーケティングの費用がたくさんかかるからなのです。楽天市場のようなショッピングモールに出店すると、出店料もかかります。グーグルで検索してもらえるようにしようとすると、検索広告費も出さなければなりません。一般的には売上の20パーセントぐらいをマーケティングに投じなければならないと言われています。雑貨は原価がそれなりにかかるし、化粧品などの消耗品のように定期的に買ってもらえるモノではありませんから、ビジネスをまわしていくのはかなり困難でした。

青木耕平さん

 青木さんはこのお金をつかって、何か別のことをしたほうが良いのでは、と思いました。思い出したのは、サイトに掲載していた社員みんなのブログでした。評判が良く、お客さんからも「いつもブログ読んでます」というメッセージが届いている。青木さんは考えました。「いまは広告を他のサイトに出してお金を払っているけれど、要するに広告というものは面白くて役に立つコンテンツをつくって、それを集客力のある媒体に掲載するというものなんだから、だったら自分たちが面白いと思った記事をお客さんの求めていることに合わせて発信すれば、自分たち自身が媒体になれるんじゃないだろうか」

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

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そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

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anonimastudio 雑誌が支えていた文化が、ネットに場を移して再生しつつあります。クラシコム代表の青木耕平さんのお話。 @cakes_PR: 【新着】メディア空間につくる物語——「北欧、暮らしの道具店」/クラシコムの文化 @sasakitoshinao https://t.co/hiaL0jLawg 約2年前 replyretweetfavorite