デジタルネイチャー」に属する未来【第51回】

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』の全原稿を火・木の週2回で公開中。フィナーレへ向かう第4章は、著書『レイヤー化する世界』で展開されていたテクノロジー論から、共同体の話につながっていきます。今回は、技術と人間の接点「インターフェース」のお話です。

「デジタルネイチャー」に属する未来

 まず第一の、新しいテクノロジーは、わたしたちが裸で世界にダイレクトに接続しているようなミニマリズム的感覚をもたらしてくれるようになること。

 これは言い換えれば、いかにわたしたちが意識せずにインターネットをつかいこなせるのかということです。たとえば日本の家電メーカーのデザインはひどいものが多く、やたらとボタンが多かったり、メニューが複雑だったり、アイコンの絵が意味不明だったり、操作するたびに取扱説明書を確認しなければならないようなものが少なくありません。直感的に理解できないのです。

 このような厄介ごとを排除して、いかに直感的に「ゆるゆる」とつかえるか。見た目も操作系もシンプルに、ミニマルにできるか。

 そうしたこころみの先駆的な例として、アマゾンのワンクリック購入があります。あまりに当たり前になってしまっているので、ワンクリックの先進性をほとんどの人はすでに忘れてしまっていると思いますが、登場したときは革新的でした。商品のページで「買い物かごに入れる」をクリックして、買い物かごを確認し、「購入」をクリックして、クレジットカードの番号を入れて、住所と氏名も確認して……とたくさんの手順が必要だったインターネットのショッピングの世界で、クリックわずかひとつで購入できるようにしてしまったのです。

 アマゾンは特許も取ったこのワンクリック購入と、自分のほしいものがかなり的確に表示される「おすすめ」機能のふたつが圧倒的につかいやすく、これによってインターネットショッピングの天下をとったといっても言いすぎではありません。

 最近のネットメディアのサイトもそうです。少し前までは、ネットで読む記事というと、やたらとページをめくるようになっていて、何度も「次のページ」ボタンをクリックしないと先に進めなかったり、上下左右にうっとうしい広告が表示されていて、画面が汚かったりしましたよね。でもこういうメディアからは読者が離反するようになり、いまはアメリカでも日本でも、ずっとすっきりした画面のメディアが増えてきています。広告表示はなく、「次のページ」ボタンはなくて、ひたすらスクロールしていくだけで記事すべてが読める。スマートフォンの小さな画面でもストレスがなく、記事を読むことだけに集中できるようなデザインがだんだん主流になってきています。

 ウェブの世界には、UXとUIということばがあります。前者はユーザー・エクスペリエンス、つまり利用者の体験。後者はユーザー・インタフェイス、日本語でいえば操作方法。たとえばスマホをつかうときに、タッチスクリーンでスワイプ(指をすべらせる)やピンチ(指でつまむ)などの操作によって画面を動かす場合、その操作方法がUIです。パソコンでマウスやキーボードをつかうのも、UIです。

 説明をもっとわかりやすくするために、「料理を食べる」という行為で考えてみましょう。UIにあたるのは、皿やスプーンやフォーク、箸といった道具です。

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ジャーナリスト・佐々木俊尚が示す、今とこれからを「ゆるゆる」と生きるための羅針盤

そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚
アノニマ・スタジオ
2016-11-30

この連載について

初回を読む
そして、暮らしは共同体になる。

佐々木俊尚

ジャーナリスト・佐々木俊尚さんの最新刊『そして、暮らしは共同体になる。』がcakesで連載スタート! ミニマリズム、シェア、健康食志向……今、確実に起こりつつある価値観の変化。この流れはどこへ向かうのでしょうか?深い洞察をゆるやかな口...もっと読む

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THOUSAND_PORT 2件のコメント https://t.co/klfl4jBFaT 2年以上前 replyretweetfavorite

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marekingu #スマートニュース 2年以上前 replyretweetfavorite

elm200 デジタル的自然、か。人類は極めて柔軟性の高い種族で、自分が生み出したものを環境の一部として素早く受け入れてしまう。30年後には、デジタルとアナログの二項対立があったことなどすでに忘れているのかも。 2年以上前 replyretweetfavorite