「デジタルネイチャー」に属する未来
まず第一の、新しいテクノロジーは、わたしたちが裸で世界にダイレクトに接続しているようなミニマリズム的感覚をもたらしてくれるようになること。
これは言い換えれば、いかにわたしたちが意識せずにインターネットをつかいこなせるのかということです。たとえば日本の家電メーカーのデザインはひどいものが多く、やたらとボタンが多かったり、メニューが複雑だったり、アイコンの絵が意味不明だったり、操作するたびに取扱説明書を確認しなければならないようなものが少なくありません。直感的に理解できないのです。
このような厄介ごとを排除して、いかに直感的に「ゆるゆる」とつかえるか。見た目も操作系もシンプルに、ミニマルにできるか。
そうしたこころみの先駆的な例として、アマゾンのワンクリック購入があります。あまりに当たり前になってしまっているので、ワンクリックの先進性をほとんどの人はすでに忘れてしまっていると思いますが、登場したときは革新的でした。商品のページで「買い物かごに入れる」をクリックして、買い物かごを確認し、「購入」をクリックして、クレジットカードの番号を入れて、住所と氏名も確認して……とたくさんの手順が必要だったインターネットのショッピングの世界で、クリックわずかひとつで購入できるようにしてしまったのです。
アマゾンは特許も取ったこのワンクリック購入と、自分のほしいものがかなり的確に表示される「おすすめ」機能のふたつが圧倒的につかいやすく、これによってインターネットショッピングの天下をとったといっても言いすぎではありません。
最近のネットメディアのサイトもそうです。少し前までは、ネットで読む記事というと、やたらとページをめくるようになっていて、何度も「次のページ」ボタンをクリックしないと先に進めなかったり、上下左右にうっとうしい広告が表示されていて、画面が汚かったりしましたよね。でもこういうメディアからは読者が離反するようになり、いまはアメリカでも日本でも、ずっとすっきりした画面のメディアが増えてきています。広告表示はなく、「次のページ」ボタンはなくて、ひたすらスクロールしていくだけで記事すべてが読める。スマートフォンの小さな画面でもストレスがなく、記事を読むことだけに集中できるようなデザインがだんだん主流になってきています。
ウェブの世界には、UXとUIということばがあります。前者はユーザー・エクスペリエンス、つまり利用者の体験。後者はユーザー・インタフェイス、日本語でいえば操作方法。たとえばスマホをつかうときに、タッチスクリーンでスワイプ(指をすべらせる)やピンチ(指でつまむ)などの操作によって画面を動かす場合、その操作方法がUIです。パソコンでマウスやキーボードをつかうのも、UIです。
説明をもっとわかりやすくするために、「料理を食べる」という行為で考えてみましょう。UIにあたるのは、皿やスプーンやフォーク、箸といった道具です。
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