藤田貴大
つくられたものと目が合う。
-偽りでも戯れたい-
【第7回】 演劇作家は"見せる"だけでなく、"見る"ことにも精を出す。それが、ちょっとした女子の秘密だとしたら、ますます見逃すわけにはいかないのかもしれない。"知りたい"欲望は果てしなく、今日も誰かに会っては、悶々とする――。
ほんとうの眼がわからないくらい眼をつくりこんでいるひとが、まあむかしっから、それはほんとうの眼なの、ってひとはいたものの、さいきんは増して、過剰につくりこんでいるひとたちがいるような気がしている。つけまつげ、どころか、まつげのエクステがあるらしいし。カラーコンタクト、どころか、黒目を大きくみせるために瞳の輪郭をはっきりとさせる、デカ目カラコンってのもあるらしい。瞳が光の反射をしないように、瞳全体にマットな質感を持たせるカラーコンタクトもあるんだとか。目頭切開とか、なんだとか、もうそういうのも当たり前なのだろう。女子じゃなくても、オトコだって、それをするという。そんないろんなつくられた眼たちとぼくらは日々、じつは出会っているはずで。ふとした拍子に目が合った眼は、ほんとうの眼なのかどうか、わからないくらいのかんじなのだろうとおもう。
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この連載について
藤田貴大
演劇界のみならず、さまざまなカルチャーシーンで注目を集める演劇作家・藤田貴大が、“おんなのこ”を追いかけて、悶々とする20代までの日常をお蔵出し!「これ、(書いて)大丈夫なんですか?」という女子がいる一方で、「透きとおった変態性と切な...もっと読む
著者プロフィール
1985年生まれ、北海道出身。桜美林大学文学部総合文化学科にて演劇を専攻、2007年に『スープも枯れた』でマームとジプシーを旗揚げ。2011年に発表した三連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2013年『てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。』で初の海外公演。さまざまな分野のアーティストとの共作を意欲的に行うと同時に、中高生たちとのプロジェクトも積極的に行っている。主な演劇作品は『あ、ストレンジャー』『cocoon』『書を捨てよ町へ出よう』『小指の思い出』『ロミオとジュリエット』『sheep sleep sharp』など。著書に『おんなのこはもりのなか』『Kと真夜中のほとりで』がある。