学歴の高い親ほどおかしやすい、「子育ての失敗」とは?

学歴の高い親ほど、子育てに苦労する側面があります(すべてではありませんが)。それは自信の副作用のようなものかもしれません。自分のようにやれば、我が子だってうまくいく。その意識が邪魔をして、人の意見に耳を傾けないから、子育てで困難に直面したときに出口を見つけられない――。今回は、そんな悩みをもつ保護者にとって、有益なお話です。連載第5回。

机に向かい、ペンをにぎるとき、子どもの頭はつねに「学習」に向かっているのだろうか—。(shutterstock)

子どもたちの「データベース」づくり

 日比谷高校で私が始めたことのひとつに、子どもたちの「データベースの作成」があります。

 「データベースの作成」などと言うと、なんだか無機質な管理システムをイメージされるかもしれませんが、要は「教員全員が相談に乗れるよう、子どもたち一人ひとりの情報を教員みんなで共有しよう」という取り組みです。

 以前は、たとえば数学の教員は、一人の子に対して数学だけの成績しか把握していませんでした。すると、数学の成績が東大へ入れるラインに達していれば、それだけで安心してしまうところがありました。

 ところが俯瞰して見ると、その子は数学の勉強にばかり時間をかけており、実は苦手な英語の成績が下がっている、というような事態が起こっている可能性もあったわけです。

 であれば、その子に今必要なことは、数学ではなく、英語の底上げに費やす時間ではないか。「データベースの作成」は、そうした状況を可視化するためのものです。入学当初からの全教科における成績、模擬試験の点数など、子どもたちの情報にすべての教員がアクセスできるようにしました。

 「データベースの作成」を行った結果、実際に私のところへ次のような報告をしてくれた子がいました。

  「私は東大の個別学力試験の直前、数学がまったく伸びずに悩んでいました。どうしたらいいかと先生に相談へ行ったところ、『キミの場合は、数学よりもむしろ日本史のほうを伸ばしていったほうがいい』とアドバイスをもらったんです。そこで切り換えて、日本史をがんばったら、無事に合格ラインへ達することができました」

 まさに狙いどおりの成果。嬉しい報告です。

 校長である私本人に直接、相談に来る子もたくさんいます。

 先日も「自分は理学部に進みたいのだけれど、親には医者になれと言われています」という子が来ました。

 データベースにアクセスして彼の学習ぶりを確認し、本人がこれからやっていきたいこと、進みたい大学、そのために必要な学習のことなどを話し合いました。1時間ぐらい話したでしょうか。彼は最終的に「将来は、海外で研究したいんです」という夢を教えてくれました。

子どもたちの相談に乗るときは、私は本人に結論を出させると決めています。私は自分なりの意見は伝えたうえで、「あなたの人生の主人公は、あなた自身だからね」と最後に加えました。

 あとで本人が言っていたのですが、その子が教員に意見を求めたのは私で「5人目」だったそうです(笑)。それでいいと思うのです。

できるだけ多くの人に相談できるようにする

 データベースをつくる前は、子どもの全体の成績についても、個別の相談事についても、クラス担任が丸抱えするような状況がありました。

 それは決してよいことではありません。子どもたちが頼れる相手は、一人でも多いほうがいいに決まっています。意見やアドバイスは、たくさんあったほうがいいのです。「データベースの作成」は、そのための環境づくりの一つに過ぎません。

 「担任の先生以外の先生にも、どんどん相談しなさい」と私はつねづね、子どもたちに言っています。

 もっと言えば、相談相手は教師だけとは限りません。親戚の方だったり近所の信頼できる方だったり、親の友だちだったり。塾や習い事の先生なども含め、多くの相談窓口があることで、子どもたちの視野は広がり、解決の糸口を見つけやすくなります。だから、あえて親のほうから「自分が相談したい人に相談するといいよ」と声をかけてあげるのもいいと思います。

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コメント

nointensions 「担任の先生以外の先生にも、どんどん相談しなさい」と私はつねづね、子どもたちに言っています。 https://t.co/yRe2trpiiP 2年弱前 replyretweetfavorite

nointensions 「校長である私本人に直接、相談に来る子もたくさんいます。先日も「自分は理学部に進みたいのだけれど、親には医者になれと言われています」という子が来ました」 校長に相談は中々ないだろうなあ。 https://t.co/yRe2trpiiP 2年弱前 replyretweetfavorite

nointensions 「入学当初からの全教科における成績、模擬試験の点数など、子どもたちの情報にすべての教員がアクセスできるようにしました」 https://t.co/yRe2trpiiP 2年弱前 replyretweetfavorite