SNSでの投稿で合格を取り消されるのはなぜか
今年4月、ハーバード大学で少なくとも10人が合格取り消しになる事件があった。理由はフェイスブックの投稿だった。
日本人にしてみれば、「特定の思想を抑圧するのは問題ではないか」、「大学がそこまでするのはやり過ぎでは?」という疑問も出ているようだが、どうしてこのようなことがよしとされるのか、検証してみよう。
大学合格が決まった学生は、肩の荷が降りてつい暴走しがちだ。しかし、そこには落とし穴がある。アメリカの大学には、学生の合格を取り消す権利があるのだ。高校の最終学期の成績がガタ落ちになったり、酔っぱらい運転で事故を起こして合格取り消しになるようなケースはけっこうあるという。
ハーバード大の学生新聞『ハーバード・クリムゾン』の記事によると、今回合格取り消しになった学生らは合格者同志が繋がるフェイスブックのページで「Harvard memes for horny bourgeois teens(好色なブルジョア・ティーンのためのミーム)」というプライベートグループを作り、そこで性的に露骨なメッセージを取り交わしていた。
グループのタイトルにある「ミーム」とは、ソーシャルメディアなどでコピーされて、どんどん拡散していく画像やビデオなどのことだ。
問題になったのは、このグループが取り交わしていたミームの内容だ。クリムゾン紙が入手したスクリーンショットによると、性暴力、ホロコースト、児童の死などをエンタメとして笑いの対象にしていた。児童虐待をすると性的に興奮するというメッセージ、人種・民族マイノリティをターゲットにしたものもあった。
「メキシコ人の子どもを吊るしてピニャータにする」ことを語っていた者もいた。アメリカの子どもの誕生日パーティでは、キャンディを中に詰めた「ピニャータ」というハリボテ人形を目隠しして木の棒で叩く「スイカたたき」のような遊びがある。それはメキシコから来た遊びなので、うまい冗談のつもりだったのだろう。
このグループの存在と取り交わしていた内容が明らかになった後、ハーバード大学は、グループに参加していた学生たちに自主的に投稿内容を提出するよう求めた。そして、問題の投稿をした学生たちに合否の再考察をしていることを伝えたという。
その結果、グループのメンバーの一部が合格を取り消された。
この情報を私がツイッターで伝えたところ、「特定の思想を抑圧するのは問題ではないか」、「大学がそこまでするのはやり過ぎでは?」という反応があった。こういった懸念や疑問が出るのは、日米の大学の入試制度、大学の運営システムなどが根本的に異なるからだろう。