「な、なんや! 百鳥さん戻ってきたんか!」
「そうよ、家に帰れなくなっちゃって」
「あほいいな! ようやっと帰ってくれたと思っとったのに!」
「ひどい。そんな人を厄介者みたいに。さっきはあんなに爽やかに見送ってくれたじゃない」
「うっさいわ。誰だって見送りのときはちゃんとするがな。それで、わざわざ訪ねてきて、どうせいっちゅうんや。もう金なら貸せんで」
「え、交番ってお金貸してくれるところじゃないの?」
「あれはなけなしの我の金や。田舎の公務員の安月給をなめんなや」
「そっかぁ。ごめんね。じゃあ、今日は別荘まで送って」
「あほいえ、パトカーはタクシーちゃうからな!」
「いいじゃない、これで冤罪の件はチャラにしてあげるから」
「こないだのお金借りるときも言っとったで」
「そう……?」
「かぁ——。ほんまめんどい姉ちゃんと関わり持ったわ。ほな、待っとれ。あとで送ったるから」
「ありがと」
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