左から柴那典、DJ YANATAKE、大谷ノブ彦
ドレイクが仕掛けた大喜利
柴那典(以下、柴) 前回は日本でもヒップホップのメディアができたことでシーンの状況がどんどん変わっていくんじゃないかという話でした。
大谷ノブ彦(以下、大谷) やっぱり僕はもっとヒップホップの人たちがフェスに出てほしいんですよね。それこそ『フリースタイルダンジョン』に出てるラッパーが、1万人以上がいる場所で自分の曲やってがんがん盛り上げてほしい。
DJ YANATAKE (以下、YANATAKE ) それは本当に思いますよ。
大谷 そのためには、もっとボケ側にまわる人が出てくるといいと思うんです。
柴 あー、たしかに。そういう人は少ないかも。
YANATAKE ボケ側にまわる?
大谷 日本のヒップホップってツッコミ側の文化がめちゃくちゃ強い気がしていて。この「心のベストテン」でもよく話題になるんですけど、本当に大衆性を持ったスターって、ある種のスキとか可愛げがあると思うんですよ。だからシーンのアイコンが突っ込まれてボケ側になる人が出てくることが必要だと思うんです。誤解されること、笑われにいくのも含めて。
YANATAKE たしかに、日本のヒップホップのシーンに笑われにいく人は少ないかもしれないですね。でも言い得て妙かもしれない。だって、アメリカだったらドレイクが笑いの対象になってるわけだから。
柴 そうなんですか? あのグラミー2冠の大御所ドレイクが!?
YANATAKE 完全にネタになっていますよ。たとえば「ホットライン・ブリング」という曲があるんですけど、彼がこのMVでやってる踊りがすごく特徴的なんです。
YANATAKE で、この4分過ぎのところでやってる振り付けのところで、ドレイクにテニスラケットをもたせたり、スターウォーズのライトセーバーをもたせたり、ポケモンボールを投げさせたりする動画がネットにたくさん上がっていて。
柴 ははははは。ほんとだ! おもしろい!
YANATAKE そうなんです。これね、背景をヌキやすい映像にして、完全にイジられにいってますからね。で、この曲が入っている『Views』のジャケットを見てもらってもいいですか。
YANATAKE ここの左上にひょっこり本人が座っているじゃないですか。そうしたら、この小さなドレイクをいろんな画像にはめ込んで遊ぶ人たちが出てきた。
大谷 あははは。どこにドレイクが座っていたらおもしろいかっていう大喜利だ。
YANATAKE こうやってネットを盛り上げることが、ビルボード1位をとることにつながるんですよ。ケンドリック・ラマーの『DAMN.』もそうですね。このジャケットもすでにネットでバズってます。
柴 この顔のところを変えて?
YANATAKE そうそう。顔を変えている『DAMN.』のジャケット画像や、このケンドリックの表情にオチをつけるツイートがネットにすごい上がってる。ロゴから表情まで、全部狙ってるんですよ。
大谷 いくらでも使ってください、俺をサンプリングしてくださいってことだ。
柴 なるほど。それに比べたら今の日本のヒップホップには大喜利ネタを作る人がいないってことですよね。ピコ太郎をやれる人がまだいない。
YANATAKE そういうことです。
時代を作るのはケンドリック・ラマー
大谷 YANATAKEさんから今年のヒップホップでまず聴くべき一枚を紹介するとするならば、どれになりますか?
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