憎悪の犠牲者
5月26日、オレゴン州ポートランド市の電車の中で、3人の男性がナイフで刺され、2人が死亡する事件があった。ひとりはかろうじて生存したが、現在も重体だ。
2メートル近い身長で100kg以上ある巨漢の白人男性が、電車の中で十代の少女2人に向かって「イスラム教徒は死ぬべきだ。キリスト教徒を殺してきたのだから」といった罵声を浴びせかけた。
少女のひとりは黒人で、もうひとりはヒジャブをかぶっていたという。
3人の男性は男をなだめようとしたが、いきりたった男に刃物で刺された。
目撃者の証言で逮捕された容疑者のジェレミー・ジョーゼフ・クリスチャンは、じつは事件の1ヶ月前にもソーシャルメディアで話題になっていた。
ポートランドには100年以上の歴史を誇るバラの祭り「ローズ・フェスティバル」がある。その皮切りとなるパレードは、近年多様性を祝福する場にもなっていた。しかし、今年は大統領選の影響で政治的対立が際立っており、暴動を恐れた警察が中止した。そこで、パレードの代わりに草の根団体が4月末に企画したのが「発言の自由」集会だった。
容疑者のクリスチャンは、その「発言の自由」イベントに独立戦争時代のアメリカ軍の旗をマントのように羽織って現れた。
12:21 - 2017年4月29日|@itsmikebivins|Twitter
「ニガー(黒人に対する蔑称)」と唱えながら、ナチスドイツのヒトラー式敬礼を繰り返す彼の姿はたちまちツイッターで話題になった。
クリスチャンを取材した地元ジャーナリストの記事によると、彼のヘイトの対象は「イスラム教徒、ユダヤ人、フェミニスト、リベラル」と幅広く、警察に対しても、「自分から武器を取り上げようとするなら、撃ち殺す」とフェイスブックに脅し文句も書いていたらしい。
ヘイトクライムの増加
この事件に関してはまだ「ヘイトクライム」と認定されてはいないが、人種や宗教に基づいた嫌がらせや犯罪がアメリカで増えているのはトランプ大統領のせいだと感じている人は少なくない。
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