藤田貴大
女優の「肌」と出会う旅。
ーこれはサディスティックな何かではないー
【第5回】演劇作家は夢をみる。滅多に出会うことのない、理想の「肌」を追い求めて。世にいう美肌なんか目じゃない。きれいに化粧をほどこしても、彼の前では意味がない。なぜなら・・・。
顔を埋めたくなるくらいの「肌」には滅多に出会うことはできないわけだが、だからこそ出会うためには必死だ。ひとそれぞれ、理想の「肌」というものがあるだろうから、すべてのひとが異なったルートでなんらかの「肌」と出会うのだろう。もちろん、人間の「肌」が到達点じゃなくてもいい。樹木の「肌」しか愛せない人だっているとおもうし。価値観みたいなものを統一するのは大変だとおもうんだけれど。
ひとつのラインとして、まずは抗(あらが)えない「肌」が好きかどうか、っていうのはあるとおもう。わかりやすいところでいえば、老いによって隠せない手の甲の皺(しわ)とか。青く浮き出た血管とかが有りかどうか。そこまでいかないくらいの「肌」も、ぼくはたまらない。これからの数年間でどんどん皺が増えていくのだろうな、と。予感させてくれるような観察し甲斐のある「肌」は、見届けるまでは死ぬわけにはいかないと否応なしだ。
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この連載について
藤田貴大
演劇界のみならず、さまざまなカルチャーシーンで注目を集める演劇作家・藤田貴大が、“おんなのこ”を追いかけて、悶々とする20代までの日常をお蔵出し!「これ、(書いて)大丈夫なんですか?」という女子がいる一方で、「透きとおった変態性と切な...もっと読む
著者プロフィール
1985年生まれ、北海道出身。桜美林大学文学部総合文化学科にて演劇を専攻、2007年に『スープも枯れた』でマームとジプシーを旗揚げ。2011年に発表した三連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2013年『てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。』で初の海外公演。さまざまな分野のアーティストとの共作を意欲的に行うと同時に、中高生たちとのプロジェクトも積極的に行っている。主な演劇作品は『あ、ストレンジャー』『cocoon』『書を捨てよ町へ出よう』『小指の思い出』『ロミオとジュリエット』『sheep sleep sharp』など。著書に『おんなのこはもりのなか』『Kと真夜中のほとりで』がある。