食事を終えて、運転席にはユウカ、助手席には池崎、後部座席には高畑という配置で日産ノートに乗り込んだ3人。これから3人でどこに遊びに行こうというのか、ユウカ1人だけがそわそわした気持ちを抱えていた。この3人の中で一番事情を知らない池崎がまずは口を開いた。
「高畑さん、どこか行きたいところありますか?」
「そうだな。小豆島にきたら行きたいと思ってたところがあるんだ」
「どこですか?」
「エンジェルロード」
エン……ジェル……ロード……と一文字ずつナビに入力していく池崎。
「オッケー。やっぱりナビは便利ですね! ほら、小豆島 エンジェルロードって出てきた。ところで、エンジェルロードって何ですか?」
「海の潮が引くときにできる砂の道で、カップルに人気のスポットらしいんだ」
「へ〜そうなんですか。ロマンチックですね。高畑さんは、デートでも夜景とか観に行きそうですよね〜」
(……池崎……あんたスルドイわね)ユウカは居心地悪く感じてひとつ咳をした。ほんとに奇妙なあいのりラブワゴン……あ、ワゴンじゃない日産ノート。
「高畑さんは、昨日どちらに泊まられたんですか?」ユウカの心にさっと影が差しこむ。一番話して欲しくない話題……。
「僕かい? 僕は坂手の小豆島ベイリゾートホテルだよ。」しれっと何気なく高畑は答える。
「へ〜、リゾートホテルって高畑さんらしいですね。僕らがおととい泊まった民宿とは全然違うんだろうなぁ」
自然とそんなことを口にする池崎。そういってユウカの方を見てくるから反応に困る。「う、うん。いま運転してるから」と素っ気ない態度をユウカは池崎にとった。
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