食中毒で1日だけ入院していた池崎の元にあらわれた高畑は、見舞いだといって花束を持ってきた。
私と池崎の関係に気づいた高畑が、なんの目的もなく、ここに来るわけがない。ユウカは、高畑が池崎に何を言うかわからないので、とりあえず高畑を病室から連れ出すことにした。
「わたし、ちょっと水買ってくる」
病室を出て行こうとして、その途中でボーッと立っていた高畑の足を思いっきりユウカは踏んだ。すぐに視線で「そのまま騒がずに私についてきなさい」と高畑に伝える。高畑は足を痛そうにしていたが、「あ、僕もコーヒー飲みたいので一緒に行きます」と病室の外に連れ出すことに成功した。
自販機の置いてある休憩スペースで、ユウカは高畑に詰め寄った。
「高畑さん、どういうつもり? 突然小豆島にやってきて、そのうえ、病院にまでくるなんておかしいんじゃない? なんで病院にきたのよ?」
「え、何でって、決まってるじゃないか。彼のお見舞いだよ」
「ほんっとに信じられない。それだけが目的じゃないでしょう?」
「ほんとにそれだけなんだけど……」
「もう!」
ことの真偽はわからないが、病室を離れる時間が不自然に長過ぎると池崎が怪しむだろう。「彼に変なこと言わないでよ」とだけ言うとユウカは足早に病室に戻った。時間差で高畑も病室に戻って来る。