雨宮まみさんの遺したもの〈後篇〉

2016年11月15日、作家・ライターの雨宮まみさんが亡くなりました。少なからず縁があった詩人・文月悠光さんが、前篇に引き続き、雨宮まみさんの遺したものに向き合います。

 今年3月、京都の書店での朗読会で、雨宮まみさんとの出会いについて話していたときだった。

 不意に「推薦のエッセイを朗読してほしい」と司会の方に頼まれた。突然のことに面食らいながらも、『わたしたちの猫』に寄せてもらった雨宮さんのエッセイを一部読み上げた。
 朗読の後、「雨宮さんの文章は、どんな内容であっても品があって、気持ちを溶かしてくれる。お薬みたいなんです」と口をついて出る。

恋はすべてどこまでも片思いだ。(中略)
ひとは誰かに自分を、認めてほしいのでも褒めてほしいのでもなく、「確かめてほしい」のだと思う。

『わたしたちの猫』推薦エッセイより

 雨宮さんの言葉は、読者である私の思いをきっぱりと肯定してくれた。

〈ひとと関わらなければ、ひとに輪郭は生まれない〉。互いに〈輪郭〉を与えては、新しくそれを結び直していく—恋愛関係、ないし人間関係とは、そのようなものだろうか。


2017年5月15日 雨宮まみさんの半年命日会にて 著者撮影

「わたし」を生きること

 まだ10代の頃、「若死にすれば、詩人として名を残せるよ」と冗談で言われることが少なくなかった。未だに告げられるその言葉を、25歳の私は「夭折するにも中途半端だから、できるだけ生き延びてみせます」と笑い飛ばす。

 そう切り返しながらも、どこかで傷ついている。自分の「生き死に」が他者の手で物語化されてしまうことへの、身勝手に語られてしまうことへのかすかな違和感。「死」の訪れなんて自分自身にも操作できないのに、死によって人生の結末は決まってしまう。その理不尽さに戸惑う。


 私にはどうしても気にかかる事柄がある。

 雨宮さんが亡くなって以降、幾度か「雨宮さんの死に対する志向性にシンパシーを感じてきた」「自分も雨宮さんのように死んでしまうかもしれない」という同世代の女性と出会ってきた。

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臆病な詩人、街へ出る。

文月悠光

〈16歳で現代詩手帖賞を受賞〉〈高校3年で中原中也賞最年少受賞〉〈丸山豊記念現代詩賞を最年少受賞〉。かつて早熟の天才と騒がれた詩人・文月悠光さん。あの華やかな栄冠の日々から、早8年の月日が過ぎました。東京の大学に進学したものの、就職活...もっと読む

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marekingu #スマートニュース 3ヶ月前 replyretweetfavorite

yuzumeets_an “〈ひとと関わらなければ、ひとに輪郭は生まれない〉。互いに〈輪郭〉を与えては、新しくそれを結び直していく——恋愛関係、ないし人間関係とは、そのようなものだろうか” |文月悠光@luna_yumi https://t.co/4VpHQOTo4m 3ヶ月前 replyretweetfavorite

yuzumeets_an “恋はすべてどこまでも片思いだ。(中略) ひとは誰かに自分を、認めてほしいのでも褒めてほしいのでもなく、「確かめてほしい」のだと思う。 『わたしたちの猫』推薦エッセイより” @luna_yumi https://t.co/4VpHQOTo4m 3ヶ月前 replyretweetfavorite

yuzumeets_an “わらなければ、ひとに輪郭は生まれない〉。互いに〈輪郭〉を与えては、新しくそれを結び直していく——恋愛関係、ないし人間関係とは、そのようなものだろうか” |文月悠光@luna_yumi https://t.co/4VpHQOTo4m 3ヶ月前 replyretweetfavorite