藤田貴大
その前髪は誰の指図でもない。
【第3回】 多忙な演劇作家は、ひたすら女子のことを考えて、寝る暇もない。男子のことなど、棚にあげっぱなしだ。そんなFにつきまとうあるウワサとは・・・。もし、オーディションを受けようとしている人がいたら、必読です。
ぼくは演劇作家なのだけれど、ぼくの作品に出演するのはほとんどが女子だ。理由は明確である。ぼくが四六時中、女子のことばかりかんがえているからである。逆に 言うと(いや、あえて逆にして言うことでもないのだけれど)、日々のどの時間も男 子のことをかんがえることに割いたことなんてない。だからぼくの作品に出演する男 優は前提として、興味がないから人間扱いされない。そしてぼくのそういう扱いを許 容できる男優しかぼくのもとに残らないし、いらない。とにかく女子のことばかりを かんがえすぎていて、頭が腐っているのだ。
いつまでも難解な女子の思考に絡まっていたい。出演する女優を選定する基準も、 飽きることなくずっと観察していられるかどうか。やっぱりこれに尽きる。何時間で も。いや、何週間でも何ヶ月でも観察していられるかどうか。女子なら誰でもいいっ てわけではない。厳正な線引きが、言葉にならないレベルであるのです。
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この連載について
藤田貴大
演劇界のみならず、さまざまなカルチャーシーンで注目を集める演劇作家・藤田貴大が、“おんなのこ”を追いかけて、悶々とする20代までの日常をお蔵出し!「これ、(書いて)大丈夫なんですか?」という女子がいる一方で、「透きとおった変態性と切な...もっと読む
著者プロフィール
1985年生まれ、北海道出身。桜美林大学文学部総合文化学科にて演劇を専攻、2007年に『スープも枯れた』でマームとジプシーを旗揚げ。2011年に発表した三連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2013年『てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。』で初の海外公演。さまざまな分野のアーティストとの共作を意欲的に行うと同時に、中高生たちとのプロジェクトも積極的に行っている。主な演劇作品は『あ、ストレンジャー』『cocoon』『書を捨てよ町へ出よう』『小指の思い出』『ロミオとジュリエット』『sheep sleep sharp』など。著書に『おんなのこはもりのなか』『Kと真夜中のほとりで』がある。