それでも僕は、外科医をやめない

既婚アラフォー女性なのにモテる理由

先月、突然の結婚を発表した雨月氏ですが、これまで通り知人女性との日常的な会食は節度を持った形で続けてくれてるようです。寛大な奥様に感謝しつつ、今回の雨月氏の客人はどこか危険な香りのするアラフォー女性……。モテることを自覚しているアラフォー女性との会食は、なかなか刺激的なものになったようです。

こんにちは、外科医の雨月メッツェンバウム次郎です。

新緑が眩しい5月になりました。4月から新しい職場や学校での生活を始めた皆さんは、そろそろ駆け抜けた1ヶ月の息切れが始まるころ。そう、5月病です。きちんとペースダウンをして、休めるときはきちんと休み、遊べるときはちゃんと遠出をしてください。私は1年目の研修医にも口を酸っぱくして言っています、「土日はちゃんとどこか遠出をしろよ」と。週末の休みの日には、きちんとストレス貯留メーターをゼロにしておかなければなりません。別に優しさで言っている訳ではなく、その方がウィークデイの吸収率や効率が上がるからです。

古い外科医の多くは根性論派ですから、「土日もずっと病院いろよ」なんて言う人がいるんですが、アホの極みです。その結果仕事の質と成長速度が阻害されていることに気づかないんですね。

さて、先日のこと。私は奥さんの許可を得て、ある女性と食事をしておりました。場所は東京駅近く、丸ビル1FのWIRED CAFÉ

ここは待ち合わせや、ちょっと一杯誰かと話しながらという時にとても便利なところ。私は別件を終え、がやがやと賑わう金曜のカフェに、一人でヒューガルデンホワイトを飲んでおりました。夜の10時くらいだったでしょうか。考えていることといえば、店員さんが勧めたもっとも入り口近くの席を「え?ここ?」と思わず大きな声を出して、空いている奥の席にしてもらったことの後悔。その女性店員さんだって、閉店間際に入ってきた男にそんなことを言われるいわれはありません。きっと彼女は今日帰宅して、お風呂にお湯をためて入りながら思うんでしょう。ああ、あのお客さん嫌だったな、横柄な人だったな、なんて。そして顔をお湯に半分つけてぶくぶくとため息を吐くのでしょう。

飲みやすいヒューガルデンをごくりと飲み干した私は、その彼女には頼みづらくて、別の男性店員さんにオーダーをします。

「白ワインをグラスで」

ほのかな酔いを自認してきた私は、ぼんやりと彼女から来たメッセージを思い出していました。

「今日は重大発表があります」

なんだろう……彼女は仕事もバリバリやり、幸せな結婚もして子供が一人いるという人生を歩んできた人。仕事帰りにお会いしても、いつもとてもお洒落にしています。こじらせてもいないし、なんだろうな、発表ってと思いを巡らせつつ、運ばれてきた白ワインを口に含みます。うん、冷たくて美味しい。

妊娠か、リコンか、転職か……いや、病気?それとも私に求婚?宝くじに当たった?あるいは、出馬?文春?人を殺めた?

私の貧相な想像力では、これくらいしか思いつきません。いずれも可能性は低いですし、それで私に報告ってのもなんだかなあ。

2杯目のワインを飲み干しかけたころ、彼女はやってきました。すごく着心地の良さそうな麻のワンピースの空色は、ヴィヴィッドなオレンジのバッグによく合います。

「ごめんごめん、そこでナンパされちゃっててさあー! あ、雨月何飲んでんの?」

そう言いながらナンパして来た男性の名刺を私にぽんと渡します。その名刺に書かれた肩書きは、手堅い大企業の課長……

「51歳で妻子持ちだって。私ね、あなたとはセックスできませんって言って来たのよ」

久しぶりにその単語を音声として聞いた私はびっくりしつつも、乾杯しました。彼女のハイボールの泡が音を立てて、初夏を知らせてくれます。

「でね、発表ってね、セフレができました」

「え……」

長い髪をかきあげながら平然と話してくるこの方。私は彼女の性生活については、あまり知りません。というか誰の性生活だって知りませんが。

それはどんなお相手で……と質問をしようとすると、彼女は被せて話してきました。

「ちょっと前にね、ナンパされたわけ。取引先の百貨店で。そこで、あーこの男の最終目標はセックスなんだろうなと思いながら色々話を聞いてたのよ。まあ向こうにも妻子があって、私にもダンナと子供がいるわけじゃない。それを知ってもまだ口説いてくるから、こいつは慣れてるなと思って見てた」

「どんな人なんですか?」

はいこれ、と言って彼女は再び名刺をポンと出してくれました。そこにあるのは某大手メーカーの名刺。ほほー、こういう社会的に安定していそうな人が人妻ナンパ→ダブル不倫なんてラフなことするんだなあ。妙に感心してしまったのですが……ナンパした彼もたまったもんじゃないですよねえ。こうやって名刺をポンポン見せられてしまうのですから。

しかし一体どういった流れでそんなことになってしまったのでしょう?聞こうとすると彼女はズンズン説明を続けます。

「でさ、私ちょっと仕事で遠出があったのよ。その日に彼が午後半休を取っていたからさ、車で遠出に送らせたのよ」

ふむふむ。

「そしたらね、彼が運転してたんだけど、お尻が痛くなってきたって言うのよ。女性はお尻なんか痛くならないけど、男性は痛くなるでしょ、長時間の運転だと」

ほー。まあそうかも、臀部(でんぶ)は女性の方がはるかに脂肪がリッチですからね。お尻の筋肉である大臀筋や小臀筋なんかは男性の方が大きいのですが。

「それでね、『ちょっと休憩しませんか? いや別に休憩するだけですから』って言ってきたのよ」

なんと古典的な……

「だからわたし、ラブホテルなんて10年以上振りに入ったわよ」

「それで、本当に休憩したんですか?」

「そんな訳ないじゃない!しこたまチューして、……(以下省略)。雨月、ケイクスに書いてよ!」

なんと。しこたまチュー……。そうそう、彼女はこの連載の読者さんでもあるのです。

「すみません、わたし下ネタは書かないことにしていて……」

とは言ったものの、とても興味深い事件だったので書いてしまいました。

「でもね、私自慢じゃないけど、結婚して初めて浮気したのよ。そしたらね、やっぱりダンナとのとはぜんぜん違う。今日なんて肌つやつやよ!SK-IIなんかより遥かに効くわよ!」

そう言われて、私はノースリーブから出る二の腕を触ってみました。ううん、確かにこれはしっとりとして、それでいて張りがある、明らかな「現役感」のある肌……おっと危ない危ない、こじらせ時代に一瞬戻るところでした。

「大丈夫だよ、雨月は好きだけど抱けないから!」

そう言ってあっけらかんと笑う彼女。なんだか、彼女がモテる理由がわかった気がしました。

<雨月のひとりごと>

温泉旅館へ。訳あって、この部屋に一人で泊まりました。なんとも、寂しい。でも、よく眠れました。

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それでも僕は、外科医をやめない

雨月メッツェンバウム次郎

高学歴エリート集団だと思われがちな外科医の世界は、実は、毎日人を切り刻んでる特殊な世界です。現役医師が語る外科医の世界は、とっても不思議な世界。毎日、さまざまな患者さんと接し、手術をするなかで感じたことを、ありのままに語ります。not...もっと読む

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コメント

moe_sugano 名刺ポンポンのくだりにワロタ。→ 2日前 replyretweetfavorite

joseph_jr______ https://t.co/jqiPmKmmWr エロを恥じらうお年頃でも無い。そして、エロをきわめてフツーのテンションで語る。 私もこんな人はいいなぁーと思う。 2日前 replyretweetfavorite

sayakachiba うん、笑った。w。何に対しても、正直でさっぱりとしてる人はモテると思う。 https://t.co/anInsFuvTS 3日前 replyretweetfavorite

HHIKARI7 私の知らない世界は無数にあるもんだ。 5日前 replyretweetfavorite