わけあって、冷蔵庫はございません
みなさまこんにちは。アフロで無職で独身で52歳の稲垣えみ子と申します。
早速ですが私、ただいま毎日同じような簡単なものばかりを作っては食べております。
そう、このところ料理家の土井善晴先生が提唱しておられる「一汁一菜」そのものの食生活。
それを数年前から実践しているのです。
いやいや、まさかこの私がこんなものを食べる日が来ようとは。
だって私、いわゆるバブル世代です。あのわけのわからない上昇気流に日本中が踊っていた頃に青春時代を迎え、にわかに巻き起こった「グルメブーム」のど真ん中を走り抜いてまいりました。美味しいもの、珍しいもの、食べたことのないものがどこかにあると聞けばじっとしてはいられない。家でも外でも食べることに命をかけてきた。「美味しいもの無くして何の人生ぞ!」と心から信じて生きてきたのです。
ところが。
転機は、原発事故をきっかけとした節電でした。詳しい経緯は省きますが、ひょんなことからまさかの冷蔵庫を手放す事態となり、ハテどうやって生きていけばいいのかと途方にくれたあげく、そうだ江戸時代を参考にすればいいじゃんヨと。
だってあの時代、誰も冷蔵庫なんか持っちゃいなかったんです。それでもみんな当たり前にご飯を作って食べていた。
というわけで、大好きな時代劇の食事シーンをじいっと観察する日々が始まりました。
で、わかりました! 彼らの食は、メシ、汁、漬物なんです。
メシは朝炊いておひつに保管。漬物はぬか床にある。となれば、毎食「汁」を作るだけ。
なるほど。これなら確かに冷蔵庫いらず。だって味噌汁を作るだけなら、野菜と油揚げを買えば作り置きなどせずとも5分もあればすぐできるもんね。
というわけで「冷蔵庫なし生活」は意外なほどスムーズに走り出したのでした。