牛込の加寿子荘

牛込の加寿子荘」  第二十回

不穏な発言をしてきた脅威の隣人のタエコさん。そのタエコさんとの確執は意外なかたちで幕を引くことに……。 築40年を超える「加寿子荘」での生活風景。能町みね子の自叙伝風小説!

「お隣、出たんですよ」
えっ!タエコさんが?
鍵の件でショックを受けていたのに、もっとびっくりすることを加寿子さんはサラッと言う。


「ほら、いらしてくださいよ」
タエコが!つい二週間ほど前に不穏な発言をして私を警戒させたタエコが、いつの間にか引っ越していた!まったく気づかなかった。
加寿子さんはタエコの部屋を開けて私を案内する。すっからかんになり、きれいに掃き清められた隣室。


「ここ見るの初めてでしょう」
いえ、ここはもともと私が初めて住んだ部屋でしたからね。
「あっ……あはは、うふふ、そうだったのよね」
前・タエコ宅、元・私宅であるその部屋は、まだトイレのタンクが木製だった。開けると外に落っこちてしまう謎の戸もそのまま。うれしい。


もはや私にとって大きな脅威となっていたタエコが引っ越してしまったことはもちろんホッとするしうれしいけれども、もっとうれしいのは、私の隣の部屋が空室になったということそのものである。これはチャンスかもしれない。

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能町みね子

築40年を超える「加寿子荘」での生活風景。能町みね子の自叙伝風小説!

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