わずか2日間で2人の男と夜を共にした。
この事実だけを伝えられたら、とても盛んな女性という印象を他人に与えるけど、これは、この1年ほとんど男の人とまともに交際してこなかった女が主人公の話だ。宇宙のパワーなのか、運命の巡り合わせなのか、男とのやりとりが一気に深くなるときは、いつも時期がかぶる。山羊座の女は真面目だけど、頑固で要領が悪い。だから、何人もの男と同時に交際するなんてことは実はできない。だから昨日から高畑に対して冷たく当たってるのだけど……。
高畑に忍び込まれたベッドをさっと抜け出して、部屋付きのガウンを羽織る。まさか寝ている間に高畑がベッドに入ってくるなんて思ってもみなかったけど、幸いユウカの衣服にはどこも乱れた様子はない。
ユウカは昨日から着たきりの服を着替えたかった。下着だけでも着替えたいのだけど高畑が同じ部屋にいるいま、ここで着替えるわけにはいかない。
どこかいいところはないかとテーブルの上に置いてあったホテル案内をみたら、最上階に温泉があるようだ。
ユウカは自分のキャリーケースから着替えを引っ張り出し、ホテルの最上階にある大浴場に行くことに決めた。
エレベーターを降りるとすぐに大浴場の入り口があった。脱衣場にはいり、すぐ埃と汗が染み付いたシャツとパンツを脱ぐと、タオル一枚で身体を隠し温泉に入った。時刻は朝6:30。幸いまだ他に入ってる女性はいなかった。
180度オーシャンビューの温泉からは瀬戸内海の島々が見える。朝焼けに照らされて海が黄金色にキラキラと輝いている。ユウカは適当なシャワーの前に座り、スイッチを勢いよく押す。熱いシャワーがユウカの全身に染み付いていた汗と埃を洗い流した。
頭からシャワーを浴びているとお風呂に入ったのが一昨日の民宿以来だったことを思い出す。
「ザー」と全身を洗っていると、どうしてもあの日の夜のことも思い出してくる。今でもあの夜の激しさは忘れられない。ユウカは全身を洗い終えると泡を流し、大浴槽に入った。
ユウカは他に誰もいないことを確認するとタオルを浴槽の脇に置いた。全裸の状態のまま窓際まで近づいて景色をみる。目ではいつのまにか池崎が入院している病院はどこだろうか? と探していた。
「あ、あれかな?」
わずか1日前に、あいつに見せた乳房や腰つきは本当なら昨夜も見せていたのかもしれない。
(けど……惜しかったね。でも高畑さんにはすこしも触れさせてないよ。安心して、池崎)
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