藤田貴大
はえぎわんだーらんど。
【第2回】フェチのようで、フェチに非ず。かの蜷川幸雄さんをもうならせた人気演劇作家の視線のその先には・・・。もし、街中でポニーテールの女子を見つめるアラサー男子がいたら、そっとしておいてほしい。できれば、指もささないで。
女子の生え際を見つめてしまうのだけは、やめられない。どこにいたって、そう。電車のなかや、街を歩いていても、女子の生え際ばかりが目に飛びこんでくる。初対面の女子のまずはどこを見るか、という問いにも迷わずに答えることができる。生え際だ。たとえ、額が前髪で隠れていても想像のなかであっさりと、かきわけて。あるいは、透視して。生え際に辿りつく。生え際には多くの物語が詰まっているようにおもうのだ。そして、その物語に何度、涙ぐんだことか。そう、生え際はまさに不思議の国である。もちろん、整った生え際も素晴らしいが、歪(いびつ)なやつにも奥ゆかしさを感じざるを得ない。無条件に泣けてしまう。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。
16215
false
この連載について
藤田貴大
演劇界のみならず、さまざまなカルチャーシーンで注目を集める演劇作家・藤田貴大が、“おんなのこ”を追いかけて、悶々とする20代までの日常をお蔵出し!「これ、(書いて)大丈夫なんですか?」という女子がいる一方で、「透きとおった変態性と切な...もっと読む
著者プロフィール
1985年生まれ、北海道出身。桜美林大学文学部総合文化学科にて演劇を専攻、2007年に『スープも枯れた』でマームとジプシーを旗揚げ。2011年に発表した三連作『かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと、しおふる世界。』で第56回岸田國士戯曲賞を受賞。2013年『てんとてんを、むすぶせん。からなる、立体。そのなかに、つまっている、いくつもの。ことなった、世界。および、ひかりについて。』で初の海外公演。さまざまな分野のアーティストとの共作を意欲的に行うと同時に、中高生たちとのプロジェクトも積極的に行っている。主な演劇作品は『あ、ストレンジャー』『cocoon』『書を捨てよ町へ出よう』『小指の思い出』『ロミオとジュリエット』『sheep sleep sharp』など。著書に『おんなのこはもりのなか』『Kと真夜中のほとりで』がある。