タイムカプセルを掘り起こして、君の想いを知る

タイムカプセルを開ける。星太朗が部屋の壁を見つめたとき目に入ったその言葉は、星太朗をある場所へと急き立てた。タイムカプセルを埋めた場所で、ぬいぐるみのムッシュを探す星太朗。ようやくムッシュをみつけることができたが、ムッシュは泥だらけの姿で倒れていた。
ぬいぐるみと出版社校正男子の切なさMAXの友情物語小説『さよなら、ムッシュ』を特別掲載!
イラストは、なんと松本大洋さんの描きおろし!

 脇に小さな駐輪場があったので、塀と自転車の僅かな隙間に入り込む。奥を覗くと、植え込みの向こうに、人一人が通れるほどの細い砂利道が続いていた。

 星太朗は跳ねる呼吸を落ち着かせながら、その道へ入っていく。じゃりじゃりと耳障りな音を立てながら進んでいくと、コンクリの壁に突き当たってしまった。

 呼吸がため息に変わり、力なくうなだれる。すると目線の端、低い植え込みの陰に、子ども用のスコップが落ちていた。拾おうとしてしゃがむとその先に、見慣れた赤が見える。

 ムッシュの耳だ。

「ムッシュ!!」

 星太朗は倒れていたムッシュを抱き上げる。その体は泥まみれだ。

「ムッシュ!! ムッシュ!!」

 大きな声を上げながら、小さな体をそっとゆする。

「ムッシュ……」

 抱きしめると、無意識のうちにおもいきり力を込めてしまう。


 そのとき、ムッシュの体がぴくりと動いた。

「痛い……ちょっと、痛すぎ……」

 ムッシュはかすれた声を出しながら、目をこすった。

「ムッシュ……!」

 星太朗の目が大きく開き、声にも力が蘇る。

 ムッシュはおどけた調子で、星太朗の腕をぽんぽんと叩いた。

「まぁ、ぼくは痛みなんて感じないけどね」

「何やってんだよ!!」

 星太朗は怒りをぶつけるが、その顔は安堵に包まれていた。

「疲れて寝ちゃってたみたい」

「ふざけんなよ! どんだけ心配したと思ってんだよ……」

 ムッシュはひひひと笑い、星太朗の手から降りると、真顔になって振り返った。

「見つけたよ」

「え?」

 ムッシュが植え込みの奥を指差すと、土が不自然に盛り上がっている。

「もしかして、タイムカプセル?」

「まぁね」

 星太朗は目を丸くしながら、湿った土を払った。

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さよなら、ムッシュ

片岡翔

あの日。気がついたら、その子は話しはじめていた。コアラのぬいぐるみのはずなのに。 それ以来、彼はそのことを20年間秘密にして、生きてきた――。 気鋭の新人映画監督・片岡翔が初めて小説『さよ...もっと読む

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