男と女に好きっていう感情はいらないんですよ」笑ってしまうようなセリフが炸裂する夜

がんばれ。せいたろ。ぬいぐるみのムッシュは、ラブホテルのバスルームでジャグジーの機能に感動しながら、星太朗を応援する。一方星太朗は、今まで経験したことのない衝動に襲われていた。
ぬいぐるみと出版社校正男子の切なさMAXの友情物語小説『さよなら、ムッシュ』を特別掲載!
イラストは、なんと松本大洋さんの描きおろし!

 ラブホテルの大きなバスルームに、ドサッとリュックが投げ込まれる。勢い良くドアが閉められると、ムッシュはリュックのチャックをこじ開けた。やっと外の空気を吸うことができる。

 ドアに耳を当てるが、何も聞こえてこない。

 ムッシュの知恵と経験をもってすれば、このドアなら開けることは難しくない。だけどここは一つ大人になって、邪魔をしないことに決めた。

「がんばれ。せいたろ」

 ドアに向かって男前につぶやくと、回れ右をした。

 洒落たアクリルのイスに上って、丸くて大きなジャグジーに飛び乗る。脇にあるボタンを押すと、お湯が勢い良く噴き出した。

「おぉ」

 隣のボタンを押すと、ダウンライトがふわっと消えて、ジャグジーの中が青く光る。

「おおぉ」

 もう一度押すと、それは青から紫に変わり、押す度に緩やかに色を変えていく。それを一周させてから赤に決めると、立ち込める湯気のなか、ノリノリで歌い出した。

 それはムッシュが、倫太朗コレクションの中で、ダントツにカッコいいと思っていた曲。

 山口百恵の〈プレイバックpart1〉だ。


 潮騒を聞いて燃えた 恋よ プレイバック!

 素肌にやさしく触れた 砂よ プレイバック!

 あの~夜が 初めてだったの あ~た~し~

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さよなら、ムッシュ

片岡翔

あの日。気がついたら、その子は話しはじめていた。コアラのぬいぐるみのはずなのに。 それ以来、彼はそのことを20年間秘密にして、生きてきた――。 気鋭の新人映画監督・片岡翔が初めて小説『さよ...もっと読む

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