初めてのキスから10年、結婚してから4年になる夫と、史上最大のケンカをしたのは今年の1月だった。
はじめに言うがこのケンカは史上最大というわりに派手でもなくドラマ性もなく、これまで交際した他の相手とのケンカとくらべると超地味なのだが、うちの夫との間においては、史上最大だった。
とても個人的な話だけど、人類が掘り続けてきた愛の原石とうとう暴いた気がするから聞いて。
金太郎くんはいつでも穏やか
夫は表面上、感情の起伏がほぼない。
一度、仕事か何かの大ストレスにより涙がうっすら浮かんだことをみたことがあるような気もするが、それ以外はまるで無、なんなら二度の出産にガッツリ立ち会っているが、生まれた瞬間もいつも通りの表情で「赤ちゃんってさるみたいだね」と言った。
恥とか緊張とか高揚とか落胆という、本来人の情緒を波立てさせるようなそういう感情がほぼ表面に飛び出さず。むかし、彼は蛍光塗料でわたしの名前が書かれた全身タイツを着て繁華街にサプライズ登場した時があったのだけど、そういう人目を気にしそうな時も、家で歯磨きしてる顔も、驚くほど同じ雰囲気なのだ。わたしは彼の大ファンである。
わたしはそんな彼を金太郎飴みたいと思っている。いつなんどき切っても同じ人。めったに怒らず穏やかな大好きな夫。
どんなケンカだったのか
そろそろケンカした日の話にうつる。
その日、わたしと夫は子供を両親に預け、ふたりきりで住宅展示場に来ていた。
今年の夏までに家のリフォームが完了する予定で、この日は職人さんに作ってもらう棚について細かく決めることになっていた。
打ち合わせがはじまり、リフォーム担当者は目の前に座るわたしと夫に交互に「テレビ台の棚の色は?棚には扉をつける?形は?素材は?」ということを質問し続ける。
片付けられなさ山の如しであるわたしは「棚の中を片付けるのが苦手なので、扉はあったほうがいい!」と主張した。どうせ片付けられないのだからできるだけ隠したいと思ったのだった。 彼もわたしの片付けられなさを知っているので同意してくれると思い、隣を見ると様子がおかしかった。
彼は突然静かにこういった。
「僕は、散らかった家を想像すると、帰って来たくないと思うんです」「棚の中が片付いてないどころかぐしゃぐしゃになっている家に、帰って来たくないって思うんです」と。
固まる担当者。なにこの空気と思って自虐的に「そうなんですわたし片付けが苦手で(笑)」というわたし。それにかぶせて「苦手にも限度があるよ」と夫は言った。
金太郎飴の断片が見たこともない柄になっている。
夫婦の通知表は突然渡される
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