「小栗会」が開かれていることを知っている
「朝まで飲みたい」と望むかどうかなんて人それぞれだし、自分は漏れなく電車があるうちに帰るので、朝まで飲みたがる意欲に一切の理解がない。あっちはあっちで、なぜ朝まで飲まないのかと物足りなく思っているようなのだが、万事がお互い様である。しかし、時に、朝まで飲んだ体験を「契り」とし、その場に参加しなかった姿勢を咎めようとする空気を感じることがある。その時には、朝まで飲んだからといって何がどうなるってんだ、と心の内で荒ぶるのだが、朝まで飲んだ事実を嬉しそうに高め合っているのを見て、こちらは突っ込むことを止めてしまう。
私たちの多くは小栗旬に会ったことがないが、私たちの多くは小栗旬が俳優仲間と朝まで飲んでいることを知っている。芸能人がSNSを駆使するのに慣れた私たちは、そこに載せられているモデル仲間同士の笑顔が、シャッター音から0.5秒後に澄まし顔に戻ることを知っている。仲睦まじさを見せつければ見せつけるほど、ホントは違うんでしょ、と疑われてしまう。SNSを使わない小栗旬は、私たちに仲間同士の友愛を直接は見せつけてこないのだが、私たちの多くは小栗旬が通称「小栗会」なる飲み会を開き、朝まで仲間と語り合っていることを知っている。身近な友達ですら、どこで誰と飲み会をやっているかなど知らないのに、私たちの多くは小栗旬が朝まで飲んでいることを知っているのだ。
「朝7時くらいまで道で飲んだ」
ドラマや映画の番宣で俳優がバラエティに登場すると、そのプライベートを聞くのが挨拶代わりになるが、「意外と家にいる」「休みの日は夕方まで寝ている」という平凡な意外性が8割を占めるので、積極的に外で人と飲み交わすエピソードは司会者にとってはいつでも広げやすい。しかも、藤原竜也、綾野剛、山田孝之、生田斗真、三浦春馬、岡田将生、玉山鉄二、鈴木亮平といった、『anan』の表紙を数ヶ月分回せそうな名前が小栗との飲み会を語るものだから、その場のテンションが十分に保たれる。小栗旬が色んな人と飲んでいる、最近は一体誰と……の情報が更新されていく度に「こないだも朝まで」と聞かされるから、必ず電車があるうちに帰るこちらは、会ったこともないのに苦手意識を更新してしまう。
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