当たり前」を見直すことで発信すべきテーマが見つかる−−vol.5

3月発売の新刊『なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?』(英治出版)の著者である、世界的に影響力の大きい国際ジャーナリストのヨリス・ライエンダイクさんと、『龍馬伝』『るろうに剣心』シリーズ、現在公開中の『3月のライオン』、そして以前金融を取り上げた作品『ハゲタカ』も手掛けた映画監督の大友啓史さんの対談が実現しました!一緒にゼロから学ぶジャーナリズム、文化人類学的アプローチで対象をリアルに描くなど、誤解されがちな金融街で働く人々の本質に迫る作品を世に送り出した2人の対談を5回にわたってお送りします。

”小さな社会”に入り込み、観察していく

大友 今はポピュリスト支持層を取材している(vol.4より)とのことですが、次はどういったテーマに関心を持っているんですか?

ヨリス 次に興味があるのは政策に働きかけるロビイストですね。外部からでは実際に何が行われているのかがわからない世界だと思うので。

大友 ロビイストの業界も金融業界に負けず劣らず複雑そうですね。ヨリスさんは文化人類学を学んでいたと伺いました。特定の業界に入り込んで取材を重ねていく際に、文化人類学的なアプローチは活かされているのでしょうか?

ヨリス とても活きています。文化人類学は人の行動を観察します。研究対象となるグループや部族の中に入っていって、その社会の中で何がどう機能しているかを分析していくんです。研究する期間も長く、約2年観察を続けます。

大友 長いですね。

ヨリス 金融業界も人の集団、グループです。そのため、独自のルールや慣習、価値観が存在します。私は金融業界というグループで、何が良しとされているのかを観察していきました。

大友 どんなことを観察されるんですか?

ヨリス たとえば、仕事に来ていく服装を考えた際に、どの服だと良くて、どの服だと問題があるのか、誰がどんな役割で「その服はいけない」と言うのか。調査・観察してみると、決めるのが上に立つ役職のある人間かと思いきや、そうではなかったりする。

大友 上の人間が決めるわけじゃないんですね。

ヨリス そうなんです。それで上の人間ではないとするなら、役職のない人間が帰属するグループの誰かが最初に「ダメだ」と言うんじゃないだろうか?と考えていく。このグループでの決まりごと、ルールを探っていくのが文化人類学的なアプローチです。

大友 面白いですよね。文化人類学的なアプローチは、ノンフィクション作品を撮影している人たちのアプローチにも近い。新しいアプローチ方法を取り入れていかないと、理解の難度が高い複雑な領域が増えていて困っているので、ノンフィクションに隣接するアプローチ、違った角度からアプローチを知るのは参考になります。

「敵を作らない」文化人類学的なアプローチ

ヨリス 映像で表現したいと考えている人たちの状況はどうですか?

大友 表現したい、作品を作りたいと考えている若い人たちは、既存のアプローチだけではやりたいことが実現できないことが増えているように感じています。

ヨリス そうなんですね。

大友 もっと「How to」をサンプリングして応用することが必要です。たとえば、まさに先ほどお話いただいた文化人類学的なアプローチを取り入れてノンフィクションを作るのもいいかなと。

ヨリス たしかに、映像撮影にも応用できそうです。

大友 既存のやり方だけでは、現実の変化に追いつけなくなっているんです。新しい手法をどんどん学んで、取り入れていかないといけない。文化人類学的なアプローチは、敵を作らない方法な気がしますしね。

ヨリス 「敵を作らない」というのは文化人類学的に大事なことなんです。文化人類学はその場所で行われている人々の営みを理解していくので。

大友 これまでも、そうやって様々な人々を取材してきたんですね。

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ジャーナリズムと物語の境界線を歩く/ヨリス・ライエンダイク×大友啓史

ヨリス・ライエンダイク

3月発売の新刊『なぜ僕たちは金融街の人びとを嫌うのか?』(英治出版)の著者である、を新しく発売した世界的に影響力の大きい国際ジャーナリストのヨリス・ライエンダイクさんと、『ハゲタカ』『3月のライオン』等の作品を手がけた映画監督の大友啓...もっと読む

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コメント

marekingu #スマートニュース 3年以上前 replyretweetfavorite

eijipress 【最終回!】ヨリスさんの今後の挑戦、そしてお二人が考える「クリエイティビティ」ととは?: 3年以上前 replyretweetfavorite